オフィスエントランスはいわば「会社の顔」であり、企業の第一印象を左右する重要な要素です。目的に合わせたデザインや機能を持たせつつ、おしゃれさも意識したオフィスエントランスを設けることで、企業ブランディングの効果も期待できます。
この記事では、オフィスエントランスの役割やデザインのポイントについて、事例を交えて紹介します。コストやニーズに合わせたオフィスデザインを請け負うソーシャルインテリアについても紹介するため、オフィスエントランスを検討中の方はぜひ参考にしてください。
目次
オフィスエントランスの役割とは?
オフィスエントランスは、企業を訪れた人が最初に足を踏み入れ目にする場所です。単なる受付ではなく「企業の顔」としてお客様を迎え入れ、企業のイメージを印象付けるために重要なスペースです。
受付として最低限の機能があれば入り口としては成立しますが、第一印象を意識することで、企業価値のある空間を作ることができます。また、エントランスはお客様だけでなく、勤務する社員に対して帰属意識やモチベーションを高める役割も果たします。
ここでは、オフィスエントランスの役割や重要性を3つに分けて解説します。
1. 企業の第一印象を決める
オフィスエントランスは「会社の顔」であり、エントランスが第一印象を左右します。
ガラス越しにオフィス内が見えたり、社員の働く様子が見えるエントランスだと、清潔感があり居心地の良いエントランスがあれば、採用候補者に対して入社後に働きやすい環境をイメージしてもらえるでしょう。逆に、お客様の個人情報を扱う企業であれば、オフィス内を見せずに重厚なマテリアルを用いることで、セキュリティへの配慮をアビール可能です。
自社製品やサービスのユーザーに対しても、明るさや重厚さ、信頼性といった良いイメージを与えることができれば、さらに興味を持ってもらえます。以上のように、オフィスエントランスは訪れるすべての人への印象に影響する重要なスペースであり、第一印象を決めるために作り込むことが大切です。
2. ブランディング効果を高める
オフィスエントランスのデザイン設計に企業理念やビジョンなどを取り入れることで、来訪する取引先や顧客に自社価値を効果的にアピールでき、企業PRやブランディングに役立ちます。
例えば、会社のロゴやコーポレートカラーを使用することで、エントランス空間がそのままPR材料となり、来訪した人へ印象付けることができます。また、エントランスの待合席に動画を流すためのディスプレイを配置してさりげなく自社商品をPRすることで、新たなビジネスチャンスにつながる可能性もあります。
企業理念やクレド、MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)などをグラフィックに盛り込み、エントランスに配置しておけば、来訪者の目にとまるため、視覚的なインパクトを与えることが可能です。企業イメージにマッチしたエントランス空間によって、魅力を効果的にアピールできるでしょう。
3. インナーブランディングを促進する
オフィスエントランスには、インナーブランディング強化という効果も期待できます。インナーブランディングとは、社員に自社ブランドに対する意識を高める企業の施策のことです。通勤する社員にとって、長時間過ごすオフィスの満足度は重要です。エントランスがおしゃれで自慢できるデザインだと、出勤や業務への意欲向上につながるでしょう。
また、来客が少ない企業や採用活動拠点としてオフィスを構えている企業の場合、自社社員が利用するオフィスエントランスは、社内に向けてメッセージを発する場所としても活用できます。企業理念やミッション・ビジョンを体現すれば、社員の帰属意識やモチベーションの向上が見込めます。
オフィスエントランスのデザインで意識したい6つのポイント
オフィスエントランスの重要性を押さえたところで、デザインをする上で意識すべきポイントについて解説します。オフィスエントランスを企業ブランディングや社員のモチベーションアップに役立てるためには、自社イメージと合致した空間を作り上げる必要があります。
単におしゃれさや機能性を求めるだけでなく、取引先企業や採用候補者、消費者など訪れる人にあわせて効果的なデザインを考えることが大切です。また、自社社員が利用するにあたって、業務に集中できるオフィススペースの入り口として安全対策も求められます。
1.デザインの目的
オフィスエントランスは単なる受付ではなく、前述したようなさまざまな役割を担っています。「どのような目的で、誰に対して何を伝えるためのデザイン」なのか、デザインの目的を最初に決定しておきましょう。
例えば、自社商品のPRに重きを置きたい場合は、商品ディスプレイ用のスペースや照明を重視した空間づくりが有用です。採用候補者に入社後のイメージを持ってもらいたければ、デジタルサイネージを設置して自社社員の働く姿の映像を流し続ける方法も良いでしょう。
日常的にどういった人がエントランスを利用する頻度が高いかを考え、目的を決めることが重要です。
2. 用途・機能に応じた広さ
オフィスエントランスは、用途や機能に応じた広さを確保する必要があります。求める機能は企業の方針によっても異なりますが、待合スペースや応接スペース、ラウンジ機能、自社商品の展示機能などが挙げられます。
また、オフィスエントランスのスペースが限られている場合は、広さに応じた用途を考えることも重要です。狭いスペースに多くの機能を詰め込んでしまうと、居心地の悪い空間になってしまいます。
スペースに余裕がある場合は、観葉植物やパーテーション、照明などで機能ごとに区切ると、すっきりとしたおしゃれな空間に仕上がります。
3.受付としての機能性
オフィスエントランスを設計する際は、機能性もしっかり考慮する必要があります。おしゃれでトレンド感のあるデザインであっても、受付としての機能性は無視できません。
例えば、部署数の多い会社で案内がわかりにくく来訪者が迷ってしまったり、来訪者数が多いのに待合スペースが狭かったりすると、ブランディングや第一印象に悪影響を及ぼします。エントランスの場所は、エレベーターからの動線がわかりやすく、来訪者もトイレの利用に困らないことが大切です。
また、セミナーなど大人数を収容する予定がある場合はメインエントランスとは別に出入口を設ける、応接室や会議室へ近いエントランスを来訪者用とし、社員用はオフィス近くに作る、というように用途によって動線を分ける方法も有用です。デザイン性と機能性がバランスよく融合できるようデザイン設計を検討しましょう。
4.照明やカラーの統一性
オフィスエントランスをデザインする目的を決めたら、カラーやテーマ、照明にもこだわりましょう。企業ロゴやコーポレートカラー、支社ごとの特性をデザインに取り入れ、企業イメージとの統一性を持たせることで、オリジナリティ溢れるエントランスが完成します。
また、オフィスエントランスの調光は空間の印象に大きく影響するため、照明選びも重要です。例えば、清潔感を優先する場合は青白い昼光色、リラックス効果やアットホーム感を出したい場合は温かみのある電球色、などです。
窓が大きく自然光が取り入れやすい場合は、照明を少なくしても明るさを確保でき、照明コストの節約にもつながります。最近は、時間や季節ごとに照明の色を変えられるものも登場しています。ただし、オフィスの照明を調整する場合、多くのケースで電気工事が別途発生するため、予算を確保しておく必要があります。
5.セキュリティ対策
オフィスエントランスは、社内外の多くの人が利用するため、十分なセキュリティ対策が必要です。取引先や採用候補者など社外の人がエントランスを通って社内に入る際、社員専用スペースにある機密情報の漏えいなどのリスクが考えられます。
来訪者のエントランスから会議室や応接室までの動線を考え、会議室の場所や部屋数などもセットで検討しましょう。社員用ICカードでの入退出管理や来訪者用のカードの作成などが効果的です。
また、社員専用の出入口の導入や、社員同士の会話や社内情報が漏れないよう防音パネルやサウンドマスキングシステムの設置といった対策も有効です。加えて、アクシデントや災害など緊急時に備えて、エントランスから応接室や会議室への経路を複数用意するなどの対策も必要になってきます。設計士が建築基準法に準拠するよう考える必要がある点も念頭に置いておくと良いでしょう。
6.おもてなしの意識
エントランスの「おもてなし」を意識することで、企業イメージの向上や高感度アップが期待できます。
待合スペースにソファやテーブル、香りものを置くことで、快適さを確保できます。普段の来訪者数を把握し、混み合う時間帯でも不便や不快さを感じることのないよう、十分なスペースを用意することも大切です。
無人受付の場合、受付機能付きのタブレットを設置することで、来訪者が担当部署をスムーズに探し出し、担当者と直接連絡を取れます。有人受付では、来客対応に適した角度や位置を考慮してカウンターを置きましょう。新型コロナの影響が続く今なら、検温機や消毒液も必要です。訪れた人が安心して使えるオフィスエントランスを目指しましょう。
オフィスエントランス設計の注意点
魅力的なオフィスエントランスを設計するための注意点として、次の7つが挙げられます。
- 社員と来訪者の使いやすさに配慮する
- 経営理念や企業イメージを取り入れる
- 有人受付は入口正面の設置を避ける
- 他のスペースとの統一感を出す
- 原状回復工事を考慮する
- 美しさ・清潔感を保つ
- 香りで好印象を与える
それぞれのポイントを意識して、オフィスエントランスの効果的な活用を目指しましょう。
1. 社員と来訪者の使いやすさに配慮する
オフィスエントランスは、社員と来訪者双方の目線で設計することが重要です。たとえば、おしゃれでスタイリッシュな空間であっても、出退勤時に混雑しやすい動線では快適な設計とはいえません。複雑すぎるセキュリティは、外出することが多い社員の負担となり、生産性の低下にもつながります。
受付の本来の役割は「訪問先の担当者を呼び出す」ことであり、スムーズに担当者に接続できる仕組みも必須です。デザインと機能性のバランスを考えながら、社員と来訪者の使いやすさを追求していきましょう。
2. 経営理念や企業イメージを取り入れる
「企業の顔」であるオフィスエントランスでは、経営理念や企業イメージを取り入れることで、効果的にブランディングが行えます。企業ロゴを掲げるだけでなく、コーポレートカラーを活かした空間づくりを意識してみましょう。
たとえば、コーポレートカラーが「赤」の場合、アクティブでエネルギッシュな印象があります。自社商品の魅力をアピールする展示スペースでは、赤色を大胆に取り入れることで、会社の熱量を発信できます。
一方で、赤色にはアドレナリンの分泌を促進する効果もあるといわれています。来訪者にリラックスしてほしい待合スペースはアクセントカラーとして部分的に取り入れるなど、機能に合わせて使い分けることがポイントです。
3. 有人受付は入口正面の設置を避ける
有人の受付は、入口正面を避けて設置するのが一般的です。動線だけを考えると正面がスムーズに感じますが、心理的な圧迫感を与えやすいため、入口に対して斜めや横向きでの設置がおすすめ。
タブレットや受付システムを用いた無人受付が増加しているなかで、有人受付は他社との差別化にもなります。程よい距離からラウンジ全体が見渡せる位置に配置すると、トラブル発生時も早急に対処でき、来訪者へのフォローもスムーズに行えるでしょう。
4. 他のスペースとの統一感を出す
オフィスエントランスと他のスペースに統一性を持たせることも大切です。入り口だけリニューアルしておしゃれに仕上げて、お客様が来訪するエリアは手つかずのままでは意味がありません。他のオフィス空間とまったく異なるテイストだとバラバラな印象が生まれ、企業ブランディングとしては逆効果です。
エントランスから社内に入った時に違和感を感じることのないよう、会社全体で内装に一貫性や統一感を持たせましょう。エントランスデザインの目的を検討する際に、オフィス全体のコンセプトも併せて考えておくと、全体がまとまりのある空間として仕上がります。
5. 原状回復工事を考慮する
賃貸オフィスの場合は、原状回復工事が必要となります。オフィスエントランスの改装費だけでなく、原状回復工事の費用も発生するため、トータルコストを把握しておくことが重要です。
また、契約上できない改装があったり、原状回復工事に高額な費用が発生したりする可能性もあります。改装工事がはじまってからトラブルが発生しないよう、契約書をしっかりと確認し、事前にビルオーナーや管理会社に工事計画を報告しておきましょう。
6. 美しさ・清潔感を保つ
美しさや清潔感のあるエントランスを意識しましょう。おしゃれなデザインを取り入れても、きれいでないと企業イメージや第一印象自体が下がってしまいます。
呼び出し用の受話器やタブレットに埃がたまっていないか、床にごみが落ちていないか、照明の電球は切れていないか、ダンボールなど不要品置き場になっていないか、など隅々までチェックする必要があります。チェックリストを作成し、毎日の清掃時に確認を行うことで美しいエントランスを保てるでしょう。
7. 香りで好印象を与える
魅力的な空間にするために、オフィスエントランスに「アロマ」を取り入れる企業が増えています。アロマディフューザーを置くなど、心地よい香りが感じられる環境を構築することで、抗菌消臭やリラックス、ストレス軽減などの効果が期待でき、企業のイメージアップが目指せます。
また、決まった香りを「コーポレートフレグランス」として漂わせることで、香りによるブランディングも可能です。ただし、強すぎる香りは不快に感じる人もいるため、オフィスエントランスの用途や機能に合わせて、芳香範囲や香りの強さを調整していく必要があります。
おしゃれなオフィスエントランスの成功事例7選
ここからは、おしゃれなオフィスエントランスの事例を紹介します。成功事例を参考にしながら、自社のブランドイメージにマッチする空間を構築していきましょう。
1. 株式会社KIRINZ
ライブ配信の企画運営を行う株式会社KIRINZ様は、移転と同時期にコーポレートブランディングを刷新しています。新しい企業ビジョンを効果的にアピールするため、こだわったのがオフィスエントランスです。
エントランスにはアクセントとなるKIRINZのネオンサインが飾られており、多くの来訪者がロゴの前で写真を撮影し、SNSにアップしているそうです。開放感のあるオフィスエントランスは、社内と所属ライバーをつなぐコミュニケーションスペースとしても活用されています。
2. 株式会社明電舎
株式会社明電舎様は、明治時代に創業した歴史ある企業です。長い歴史のなかで培ってきた知識や技術をさらに発展させて、新たな価値を想像することを目的とするアジャイル型の製品開発にも取り組んでいます。
アジャイル型アプローチを行う共創拠点『デジタル・ラボ』のエントランスは、「明電舎のシンボルカラーであるブルーをあえて使わない」という選択をしています。これまでの企業イメージとまったく異なるデザインにすることで、社員の意識改革やリブランディングにも成功しています。
3. 株式会社リアルゲイト
都心部においてフレキシブルなワークプレイスづくりを行っている株式会社リアルゲイト様のオフィスエントランスには、こだわりが詰め込まれています。
イノベーションオフィス『the Folks by IOQ』のエントランス中央には、インパクトのあるシンボルツリーが植えられており、来訪者の記憶に残る空間に仕上がっています。グリーンが豊富に取り入れられたエントランスは、居心地の良さも魅力です。
4. 株式会社イー・ロジット
EC事業に関するさまざまなサービスを提供する株式会社イー・ロジット様は、「社員の満足度向上」を移転の目的のひとつに掲げていました。
居心地の良いデザインを考え、高品質のオフィス家具を選定したことで、全体的な出社率も向上。移転前と比べると、社員同士のコミュニケーションも活発となり、横断的な仕事や部門間の連携がスムーズに進んでいます。
エントランスは、企業ロゴとデザインと機能性を併せ持った飾り棚・収納が特徴的です。
5. モベンシス株式会社
モベンシス株式会社様は、「トラディショナルとモダンの融合」をテーマにオフィスの移転を成功させています。幅広い産業分野でモーションコントロールプラットフォームを提供するモベンシス株式会社様の新オフィスは、コーポレートカラーであるグリーンが空間をおしゃれに演出しています。
アクセントとなっているデザイン性の高い照明器具や間接照明もポイントです。企業の顔であるエントランスにもグリーンが取り入れられており、統一感のある空間に仕上がっています。
6. 株式会社ジャンプコーポレーション
「ポツンと一軒家」などのテレビ番組や動画コンテンツの企画・制作を行っている株式会社ジャンプコーポレーション様のオフィスは、ポップで明るい印象です。
コーポレートカラーの黄色がオフィスチェアやソファ、パーテーションなど、さまざまなところに取り入れられています。オフィスエントランスも、黄色が大胆に使われており、華やかです。「社員が来たくなるようなオフィス」をコンセプトにしているとおり、オフィスのいたるところにコミュニケーションの活性化につながる工夫が詰め込まれています。
7. 株式会社フォルテ
株式会社フォルテ様は、地元のつながりを大切に事業を展開している不動産会社です。「コワーキングもできるコミュニティラウンジ」をテーマに、セミナーやファミリーパーティーが開催できるスペースも用意されています。
おしゃれなエントランスから店内に入ると、相談スペースやコミュニティラウンジ、キッチンなど、さまざまな機能を持つ空間が広がっています。
会社の顔となるおしゃれなオフィスエントランスをデザインしよう
オフィスエントランスは、単なる入り口ではなく、企業の独自性やブランディングをデザインによって打ち出せる重要な空間です。おしゃれさと機能性のバランスや、オフィスの他のスペースとの統一感を意識して、訪れる人に対して企業価値をアピールしていきましょう。企業の顔となるエントランスで来訪者を印象づけるために、おもてなし感や清潔感も意識するのが大切です。
ソーシャルインテリアでは、オフィス空間のデザインや課題解決をトータルでサポートしています。エントランスを含むオフィス全体のニーズや予算に合わせた最適なプランを提案可能です。ざっくりとした要件の入力だけで簡単にお見積もりを作成できるので、お気軽にご依頼ください。