取締役など重役が使用する役員室は、単に業務を行うだけでなく、お客様との商談や会議、経営に関する大切な意思決定を行う場としての特別な役割を持っています。
一般的に、役員室といえば高級感のある内装や家具などがイメージされます。他方で、実際に役員室を整備する際には加えて、役員の業務を効率化できるよう機能性を高める必要もあり、レイアウトや構築には通常のオフィスと違った配慮や家具の選定が求められます。
本記事では、自社に役員室を設けたいとお考えの方のため、役員室に必要とされる機能や構築のポイント、おすすめのレイアウト方法を解説します。
役員室に必須の4つ要素
役員室は役員の日々の執務から業務上の意思決定、重要な商談まで多くの用途に使用されるため、機能性やセキュリティなどさまざまな要素が求められます。はじめに、役員室を構築する上で必須となる4つの要素を紹介します。
1 盗撮・盗聴・盗難を防ぐセキュリティ対策
経営に関する話し合いや外部のお客様との商談も行われる役員室では、セキュリティ対策が重要になります。内部の様子や会話の内容が漏れるようでは、経営リスクにつながりかねないため、盗撮や盗聴、盗難などの被害は絶対に防止しなければなりません。
入り口の施錠はもちろん、書庫や収納にも扉付きで施錠可能なものを導入しましょう。受付や手荷物を預かるロッカーなどを設置して必要なもの以外持ち込めないようにしたり、室内に監視カメラを設置したりするのも有効です。商談などでは、不特定多数の人間が出入りする機会もあるため、役員室への入室者管理も行うと良いでしょう。
2 情報漏洩を防ぐ機密性・防音性
役員室では、会社の経営に関わる重要な情報を取り扱う機会も多いものです。会社にとって大きな損害をもたらす機密情報の漏洩を防止するには、外部からの遮音性・遮蔽性の高さも重要になります。
役員室はエントランスから離れた、一般従業員があまり通らない場所に設置し、室内の声が漏れないよう防音性を高めた構造にします。部屋全体の防音工事が難しい場合は、防音扉やパーテーション、サウンドマスキングの導入も検討してみてください。役員室が個室でなく複数で使用するタイプなら、機密性の高い話をする場として別に会議室を設ける必要もあるでしょう。
3 執務をスムーズに進められる機能性
役員室は、役員が仕事をする作業場でもあるため、日々の業務を円滑に進められる機能性も必要です。役員室には、デスクや書庫など執務に必要な家具を置くために十分な広さが求められます。「デスクはきちんとワークスペースが確保できるもの」「チェアは長時間座っていても疲れないもの」など、業務に集中できて効率化につながる家具の選定も重要です。
また、休憩時間や業務の合間には食事や着替えなどを行う場合もあるため、プライベートな空間を確保できるパーテーションや私物保管用のロッカーなども用意して利便性を高めましょう。
4 訪問客が心地よく過ごせる環境・応接機能
外部からの来客をもてなす場所としても使用される役員室には、訪問客が快適に過ごせる環境や応接機能を整える必要があります。商談や接待で大切なのは、いかにお客様にリラックスしてもらうかです。好印象をもってもらえるよう、テーブルやソファなどの応接セットには使い心地が良く、おしゃれでゆったりとしたタイプを選びましょう。
役員室には会社の顔としての役割もあり、家具の選定やインテリア、内装などのコンセプトを企業イメージにあったものにすれば、外部の方に対するブランドイメージのアピールにもつながります。
役員室のレイアウトタイプ
役員室を設置する際には、まず、どのようなレイアウトにするか決める必要があります。一般的な個室型以外にも、最近ではフルオープン型の役員室を導入する企業もあり、折衷案の半個室型も登場しています。
企業によって導入の目的や役員室の用途が異なるため、ここでは役員室の代表的な3つのレイアウトタイプを紹介します。
1 個室型
壁や扉などで外部と区切られた個室タイプの役員室です。役員室と聞くと多くの人が個室型をイメージするのではないでしょうか。
個室型の最大の特徴は機密性の高さで、話し声などが外に漏れにくく、アクセスも制限しやすいため、情報漏洩などのリスクを最小限に抑えられます。オフィスとは異なる高級感ある家具やインテリアを設置すれば、来客に応対する際も相手に特別感をもってもらえ、好印象を与えられるでしょう。
2 フルオープン型
一般従業員のオフィスとスペースを区切らず、完全開放型になっている役員室です。扉はもちろん、パーテーションすら設けない場合もあり、役員と従業員のコミュニケーションを取りやすいのが特徴です。
近年は、社内の通気性や業務効率化を重視して、大企業でも個室の役員室を廃止するケースがみられます。工事や専用スペースを確保する必要なく、コストが抑えられるのもメリットです。ただし、セキュリティ面では個室型に劣るため、機密情報は慎重に取り扱う、重要な話し合いの際は会議室に移動して行うなどの配慮が必要です。
3 半個室型
半個室型は、オフィスの一角を扉やパーテーション、ガラスなどで区切り、役員室にするもので、個室型とフルオープン型の折衷案と呼べるタイプです。一定の機密性を確保しつつ、従業員とのコミュニケーションも取りやすくなっていて、個室型・フルオープン型両方のメリットを合わせ持っています。個室型と比べるとコストを抑えられるのも特徴です。
パーテーションなら移動が可能なので、会議など必要に応じて広さや形を変容させることができます。ガラスの仕切りを設置すれば、従業員の様子が見やすく、コミュニケーションの活性化や解放的なオフィスづくりにつながります。個室とフルオープンで迷っているなら検討してみると良いでしょう。
快適な役員室とは?レイアウトで配慮したいポイント
ここまで、役員室に求められる要素や役員室のタイプを説明してきましたが、実際に機能性の高い役員室にするには、どのような点に注意すればいいでしょうか。役員室を構築する際、レイアウトで配慮したい4つのポイントを解説します。
1 動線はゆったりと確保する
役員室は役員が日常勤務の大半を行う場所なので、業務に支障が出ないよう、動線はゆったりと広めに確保しておきましょう。デスク周りの通路幅は、700~1,000mmが目安です。
すれ違いなどを考慮した場合、オフィスでの理想的な通路幅は900mmとされますが、役員室は人の移動があまりないため、少し狭めの700~800mm程度でも十分でしょう。ただ、メインの通路や入り口付近、書棚の前など、利用頻度が多く動線となる場所では、特に広めの1,000mm程度を確保するのが理想です。
2 企業イメージや業務効率を考慮したカラーコーディネートを取り入れる
役員室のインテリアや内装には、企業のイメージや業務効率の向上を考えたカラーコーディネートを取り入れてみてください。使う色を変えれば空間のイメージは大きく変化し、働く人や訪れた人に与える印象も変わります。
例えば、淡い色は圧迫感を軽減したり部屋を広く見せたりする効果があり、茶色は上品な雰囲気で調和を取りやすい色とされています。役員室には会社の顔としての役割もあるため、自社のイメージに合わせたカラーコーディネートを考えてみてください。
また、色には人間の心理に影響を与え、業務を効率化する機能もあります。例えば、青色には集中力を発揮しやすくなる作用があり、ダークカラーは緊張感をもたらします。うまく活用すれば、議論の質の向上や業績アップにもつながるかもしれません。
3 役員室の家具は機能性・素材・サイズに注目する
役員室の家具はサイズや素材、機能性によって使いやすさや使い心地が変わります。デスクは、天板の幅160~200cm程度が標準です。パソコンや書類を置くため、作業スペースがしっかり確保でき、業務が効率的にこなせるサイズを選択してください。一般的には広い作業スペースを確保しつつ、特別感を出すために両袖机が採用されることが多いものの、役員室が狭い場合にはL字型や片袖デスクも検討すると良いでしょう。
チェアは皮革や合皮素材が多く、長時間座っていて疲れにくいことはもちろん、重厚感・高級感も求められます。素材によって印象が変わるため、デスクや部屋の雰囲気に合わせて選んでください。
書棚やキャビネットは幅90cm程度が一般的。スペースが狭い場合は、スライド式の書棚やキャビネットがおすすめです。ほかに、重要書類などを保管するため、金庫や鍵のかかる家具も設置するようにしましょう。
4 一般従業員や秘書の意見も取り入れる
役員室のレイアウトを決める際に、役員本人の意見を取り入れるのはもちろんですが、一般従業員や秘書からの意見も募ってみてください。役員室には一般社員や外部の人間も出入りするため、すべてクローズドにして役員だけで決めてしまうと一般社員から不満が出る可能性があります。
また、秘書がいる場合、役員とは違った視点から、業務効率化につながる意見が聞けるかもしれません。日ごろ一緒に働く人の意見を取り入れれば、会社の業績向上につながるより良い役員室を実現できるはずです。
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役員室のデザイン・レイアウトには、セキュリティや機能性、応接機能などが求められ、上手く構築できれば、役員の執務を効率化するだけでなく、外部に対して会社をPRする役割も果たしてくれます。近年は、従来の個室型に加えてフルオープン型のような新しい役員室も登場していて、幅広いオフィスレイアウトが展開されています。
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