オフィス移転は単なるオフィスの引っ越しではなく、企業の成長戦略や社員の働き方、モチベーションに関係する重要なプロジェクトです。また、オフィスにかかるコスト調整や人員の変動対応、企業ブランディングに生かす契機でもあります。
本記事では、オフィス移転の基本的な流れとしてオフィス移転の目的整理、オフィス移転専門チームの選定、移転先オフィスの選定方法および移転完了までの手続きについて、わかりやすく解説します。オフィス移転の事例も紹介しますので、オフィス移転をご検討の方は是非参考にしてください。
目次
移転の流れ1.まずはオフィス移転の目的を明確にする

オフィス移転を成功させるためにまず行うべきことは、「なぜオフィスを移転するのか」を明確にすることです。簡単なように見えますが、実はこの段階を曖昧にしたまま移転プロジェクトを進めてしまうと、「移転はできたけれど何だか想定したのと違う」という事態になりかねません。
オフィス移転の目的を明確にし、言語化することは、社内でオフィス移転についての認識を統一できる効果があります。「コスト削減のため」「人員増加に伴ってスペースを拡張するため」「社員が快適に働けるレイアウトに変えたいため」など、オフィス移転の検討についてどのような背景があるのかを整理し、社内のオフィス移転関係者の中で共通認識を取っておくことが大切です。
もう一歩踏み込んで「どのようなオフィスにしたいのか」という移転後のオフィスの理想像もあわせて定義できていると、移転プロセスがスムーズに進みます。目的と理想の両方を言語化し、移転後を具体的にイメージするとよいでしょう。
オフィス移転の目的としてよくある例
オフィス移転にはさまざまな目的があります。企業が実際にオフィス移転を検討・決断する代表的なケースを紹介します。
サイズを変える

オフィス移転の理由としてもっとも多いのが、組織の拡大または縮小による「オフィスサイズの変更」です。社員数が増加した場合はもちろん、リモートワークやフレックスタイム制度の導入によって常時出社する社員数が減ったことで、オフィス面積を縮小するケースも増えています。オフィス移転の目的が明確なだけに、「同時に〇〇人が働ける」「来客を含めて最大〇〇人がオフィス内に滞在できる」など具体的な稼働状況を想定して移転先の広さを設定できるため、検討や決断は比較的早いでしょう。
ただし、例えばリモートワークはあくまでも勤務形態の選択肢の一つであり、会議や打ち合わせは基本出社を推奨している場合だと、出社時の席数は確保しておかなければいけません。出社状況は変わっても社内で働く人員に大きな増減がないため、移転によるオフィスサイズの変更が課題解決の最適解か迷うところです。このような場合は、フリーアドレスの導入によって席数を確保すると同時に、出社人数の変動にもある程度対応できます。固定席を減らし、スペースを有効活用することで、より機能的なオフィスづくりが可能です。
フリーアドレスの導入については、以下の記事をご覧ください。
建物の劣化、老朽化
オフィスビル本体の劣化や老朽化も、オフィス移転を検討する大きな理由の一つです。築年数が経過した建物には次のような課題が生じやすいためです。
- 耐震性能の問題:建築基準法の耐震基準を満たしていない場合、地震時の倒壊リスクが高い
- 防災の問題:避難経路や防災設備が消防法などの最新基準に適合していない場合、火災などの発生時に従業員の安全が確保できない
- 快適性の問題:空調設備や換気設備の性能低下によって快適性が損なわれたり従業員の健康問題に発展することがある
- インフラの問題:セキュリティ計画やネットワークインフラが旧式だと、個人情報保護などの面でリスクがある
こうした問題は、日常業務の生産性低下を招くだけでなく、従業員の安全リスクなど企業としての責任を問われる事態に発展しかねません。オフィスビルが自社所有であっても建て替えは容易ではないため、問題を根本から解決するよりもオフィス移転が現実的な選択肢となるでしょう。
働き方改革
オフィス移転を働き方の再設計の機会と捉える企業も増えています。例えばフロア全体を一体化させたレイアウトは開放的ですが、従業員一人ひとりの業務内容に対応しきれないという問題があるため、作業に集中できるスペースやミーティングスペース、休憩スペースなど用途別に空間を区分して最適な場所を選べるレイアウトを採用すると、メリハリのある働き方を実現できます。
また、最近注目されている「ABW(Activity Based Working)」という考え方に合わせたオフィス計画を進める企業も多いです。ABWとは、業務内容や気分などに合わせて時間と場所を自由に選択できる考え方を指します。フリーアドレスと似ていますが、ABWは自宅やコワーキングスペースなどオフィス外の場所を状況に合わせて選び、自律的に働くことも含めた考え方です。生産性や創造性を高める方針のひとつとして活用されており、オフィス移転を契機に導入するケースも珍しくありません。
詳しくは、ABWとは?オフィス設計の新しい考え方に関する記事をご覧ください。
ABWは「好きな席」ではない。働く環境を自律的に選ぶこと。
企業ブランディングの強化
オフィスは企業の顔であり、来客に対する自社の印象を決定づける重要な要素のひとつであるだけに、顧客や取引先などに与える印象を刷新する方法として、オフィス移転により企業ブランディング強化を図る場合もあります。
たとえばスタートアップやIT企業の場合、都内であれば渋谷や恵比寿、五反田など活気にあふれたエリアにオフィスを構えることで、アクティブな印象を与えやすいといえます。金融業界や法律業界の企業だと、大手町や丸の内、日本橋といった安定感と信頼性の高いイメージがあるエリアにオフィスがあるというのは一種のステータスです。アパレル関係企業なら、青山や原宿、代官山など流行感度の高いエリアを選ぶ傾向が強いです。
オフィスの立地は企業ブランドのアピールにもつながるため、取引先の拡大や採用活動の強化にもつながるでしょう。
オフィス移転の目的が分からなくなってしまったら
オフィス移転をどのような目的で検討するとしても、前述したように「どのようなオフィスにしたいのか」という移転後のオフィスの理想像をできるだけ実現化することが重要です。そのためには、多くの事例を見てアイデアを集め、取捨選択していく過程が必要です。「こんなオフィスがあるのか」「こういうレイアウトもいいな」「このプロダクトを導入すると快適性がアップしそうだ」など、最新のオフィストレンドの把握も含めてオフィスづくりの知識を増やしていくのが、理想のオフィスづくりへの近道です。
そこでぜひ活用していただきたいのが、ソーシャルインテリアのオフィスツアーです。共創型ショールーム兼オフィス・THE MUSEUMで、執務エリアや来客スペース、リフレッシュエリアなど、リアルなオフィス空間を実際に見学できるツアーです。
どのような空間でどのようなことが実現できるか、具体例を見ながら自社のオフィス移転目的とあわせて考えることで、理想のオフィスのイメージが浮かびやすくなるはずです。
移転の流れ2.社内のオフィス移転専門チームの選定

オフィス移転の検討を始めると、多くの工程をクリアしなければならないプロジェクトということが分かります。移転先のオフィス計画に加えて既存オフィスの解約や原状回復、届出などの各種手続きと膨大なタスクがあり、しかも複雑に関連しているため、整理しながら漏れがないよう進めなければいけません。
各工程における意思決定の遅れや手戻りを防ぐためにも、オフィス移転プロジェクトの専門チームの組成は必要です。プロジェクトチームの組成には、通常総務や人事、IT、法務、経理などの部門が関与することが多いですが、プロジェクトを円滑に進めるために誰がどの役割を担うのかを整理し、全体像を把握することが重要です。
社内のオフィス移転チームの役割
オフィス移転プロジェクトにおいて、統括者は総務責任者または社長が務めるケースが多いです。加えて、社外の移転支援会社が責任者として伴走します。その他、担当者を決めておきたい主な役割をまとめました。
- レイアウト設計や内装デザイン
- 家具・什器のコーディネート
- 電源・通信などの配線設計と施工管理
- 引っ越し業者の選定および手配
- 不要になった家具やオフィス機器の廃棄手続き
内装デザインは、移転支援会社から受けた提案を移転チームメンバーで検討し、出た意見を反映させた提案を受けるという作業を繰り返しながらブラッシュアップさせていくのがスムーズです。家具にこだわりたいなら、メーカーショールームを巡って素材や張り地を確認するのがおすすめです。
ソーシャルインテリアでは、お客様と一緒に壁打ちミーティングを行いながら要望を整理していきますが、時には課題を踏まえた提案を行い検討していただく場合もあります。デザインや施工を担当するだけに終わらず、オフィスの共創パートナーとしてお客様に寄り添い、サポートするのが最大の特長です。
分野別の専門家に依頼する部分を明確にする
オフィス移転プロジェクトは、移転先のビル・オフィス選定に始まりレイアウト設計や内装デザイン、什器管理、ITインフラの整備、既存オフィスの原状回復など重要かつ複雑な工程が続きます。専門的な知識や経験を要するシーンも多いため、必要に応じて外部のプロフェッショナルに委託する場合も少なくありません。
委託範囲はオフィス移転プロジェクトの規模や相談内容によって異なりますが、「何のために移転するのか」「どのようなオフィスにしたいのか」というオフィス移転の根幹部分の意思決定は、移転の基本方針をぶれさせないためにも社内で行いましょう。あくまでも、オフィス移転プロジェクト全体の決裁を行うプロジェクトオーナーや、オフィス移転の要件定義や意思決定、社内調整を担当する社内のプロジェクトメンバーがプロジェクトを主導するという姿勢が大切です。
ソーシャルインテリアの場合、オフィス移転の方向性についてお客様と当社メンバーで壁打ちミーティングを行う段階から入るケースもあれば、社長や現場の従業員の意見を聞きながらブレストを重ねていくケースもあります。
オフィス移転という企業にとって重要なプロジェクトを任せる移転支援会社選びは、プロジェクトの成功を左右する重要なポイントです。オフィスづくりのパートナーとして、自社のオフィスへの思いを汲み取り、形にしてくれる移転支援会社を選びましょう。
移転の流れ3.移転先オフィスの選定方法

オフィス移転を成功させるには、移転先の物件選び方が極めて重要です。多くのコストと時間をかけて進めるプロジェクトですから、自社にとって必要な項目を総合的に捉えて判断していく姿勢が求められます。
基本条件と現地確認で候補を絞る
移転先物件の候補を絞り込んでいく際は、立地や建物の状況や、実際にオフィスを構えるフロアの契約条件、や管理体制、ITインフラ環境といった基本項目でまず比較検討してください。通勤手段や治安などの周辺環境といった、働きやすさに直結する立地条件も重要です。ある程度絞り込めたら、必ず現地視察を行います。図面や書面の数値だけではわからない、使い勝手や広さ、明るさ、周辺環境などをしっかり確認しましょう。
最終決定
3件程度まで候補を絞り込んだ後、次は賃料や入居時期、工事条件、原状回復義務内容などを整理して細かくチェックします。「賃料はAが理想だが工事条件はCがよい」など、比較検討すると必ず理想の要点が分散しますので、オーナーや管理会社に交渉してみるのもよいでしょう。交渉結果を踏まえて候補を一本化し、最終決定します。
移転の流れ|4.物件決定後の移転完了までの手続き
移転先の物件が決定しオフィス契約を行った後、いよいよオフィス移転プロジェクトが本格的に動き出します。オフィス移転が完了するまでには多くの工程がありますから、しっかり検討を重ねつつ工程が遅延しないようスピーディーに判断していくことが大切です。
・内装設計デザイン~工事
要件をもとにレイアウトや仕様を決め、法規協議を行います。その後見積を作成し、オフィスの管理会社へ工事申請を出して承認が下りたら施工開始です。完了検査や・是正工事までしっかり進めましょう。
・家具コーディネート~納品
自社の働き方に合う家具や什器を選定し、配置計画に沿って電源計画や配線設計を進めます。発注・搬入後にレイアウト計画通りに設置してみて、スムーズな動線で稼働できるか確認しましょう。
・既存オフィスの原状回復
「入居時の状態に戻す」のが基本的な考え方ですが、原状回復義務は契約内容によって異なります。管理会社側と原状回復の範囲について早めに確認を取っておいて、遅延がないよう確実に進めましょう。
・各種手続き
登記関係や税務、社会保険、消防、通信契約など必要な手続きを漏れなく処理しましょう。住所変更と郵便転送に加えて、取引先への通知やWebサイト・名刺の更新も忘れずに行ってください。抜けや漏れがあると信用問題につながるため、注意が必要です。
オフィス移転の事例
オフィス移転によって理想のオフィス空間を実現した事例を3つご紹介します。
課題解決に加えてこだわったオフィスの「付加価値」~フォースタートアップス株式会社様
「働く空間とは何なのか」というオフィスの根本的な存在価値に向き合い、付加価値という視点でのオフィスデザインにこだわったフォースタートアップス様。社員数の増加に伴う会議室不足や音の問題という課題解決にとどまらず、事業戦略や社内文化の変化にスピーディーに対応できるオフィスづくりを希望されました。柔軟なレイアウト変更ができる執務エリアをはじめ、音が外に聞こえにくい音響システムを採用した会議室の導入など、従業員が集中して働けるオフィスとなっています。
一体感のある「つながる」オフィスで社内コミュニケーションも円滑に~株式会社朝日ネット様
キャパシティ不足とコミュニケーションの取りにくさという課題をお持ちだった株式会社朝日ネット様は、社員全員でアンケートやワークショップに参加し要件定義を行うなど、会社全体でオフィス移転プロジェクトを進めてこられました。ワークエリアとリフレッシュエリアがゆるやかにつながるレイアウトにより、社内のコミュニケーションが促進されるなど、移転効果は課題解決にとどまらず風通しの良い企業風土の醸成にも広がっています。
ナチュラルテイストの内装に合わせた質感の家具をコーディネート~SMC株式会社 下妻工場様~
オフィス移転に伴い、ミーティングエリアやラウンジエリアを明るいナチュラルテイストでまとめたいというSMC株式会社 下妻工場様のご要望に合わせて、木を基調としたサブスク家具を導入していただきました。デスクやテーブルの質感やトーンを統一し、コーディネートするチェアでアクセントを加えた結果、一体感を感じながらも変化に富んだ新オフィスに仕上がっています。
まとめ
オフィス移転において重要なのは、オフィス移転の目的から考えていくことです。オフィス環境の課題を解決するためには、明確な目的設定と社内外の連携が欠かせません。
そして移転先の物件選定やレイアウト設計、内装デザイン、家具や什器の選定、セキュリティ対策や各種手続きなど多岐にわたる複雑な工程を問題なくクリアしていくためには、オフィス移転に精通した専門チームを組成するのが望ましいです。それだけに、信頼できる外部パートナーと連携することが、オフィス移転プロジェクトを円滑に進める鍵といえるでしょう。
ソーシャルインテリアでは、オフィス移転のトータルサポートから家具納品など部分的なサポートまで、オフィス移転の規模や予算などに合わせて柔軟に対応します。オフィス移転における豊富な実績や、実際のオフィス空間を見学できるMUSEUMでのオフィスツアーなどのサービスもぜひ活用してください。
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