会社移転・事務所移転で必要な住所変更の手続き|申請先・必要書類・期限を要確認!

法人の引っ越しは、個人の場合より必要な手続きが多いものです。手続きに期限が設けられており、遅れると罰則の対象となるケースもあります。

会社・法人移転では、いつまでに何が必要か整理し、余裕を持って準備しておくことが大切です。そこで、移転を控えた法人向けに、必要な準備と手続きの内容を紹介します。

会社の住所が変わる前に必要な準備・やること

引っ越しをする前に、住所変更に向けて必要な準備がいくつかあります。まずは、代表的なものを確認してみましょう。

1 取引先への新住所の報告(住所移転連絡

まず忘れてはいけないのが、取引先への移転連絡と、新しい住所の報告です。最低限、次の内容を共有しましょう。

・移転先住所

・移転に伴う休業期間

・新しい電話番号

オフィス移転の連絡は、書面による挨拶状の送付と、担当者ごとのメールや口頭での報告で二重に連絡しておくと、連絡漏れのリスクが減るため安心です。

2 Webサイト・社内資料など社内の情報の変更

社内の情報も、忘れずに移転までに変更しておきましょう。たとえば、次のようなところで住所変更が必要ないか確認してみてください。

・Webサイトの会社概要ページ

・従業員に配布している名刺

・外部向けの社用封筒

・プレゼン資料や申請書類など共有フォーマットの記載

・社名と住所の彫られている判子

3 インターネット・電話回線の移転手続き

インターネットと電話は、手続きが遅れると業務に支障をきたすため、移転に間に合うよう手続きが必要です。電話番号は、新たな番号の契約に加え、旧番号にかかってきた電話の転送や、新番号のアナウンスも申し込んでおきましょう。移転の1か月前には手続きをしておきます。

インターネットは、まず契約を継続するか、移転を機に乗り換えるかを決定し、プロバイダに連絡します。回線工事が混み合う時期は、遅くとも2か月前に連絡しておくことが望ましいです。

4 公共料金の停止・開始の手続き

電気とガス、水道の手続きも忘れてはいけません。電話またはインターネットから連絡が可能です。最低でも2週間前には手続きをしておきましょう。

オフィス内でガスを利用しているケースは、移転先の開栓の立ち会いが必要なため、スケジュールを調整しておきましょう。

5 リース契約している業者への連絡

複合機やパソコンなど、社内の備品のうちリース契約で使用しているものがあれば、勝手に拠点から移動させてはいけない場合があります。設置場所を契約で指定している場合、条項の変更が必要になるためです。

ものによっては、リース会社が移動を担うものもあるため、スケジュール確保のために早めに相談しておきましょう。引っ越しが決まったタイミングで、どのような手続きが必要か一度問い合わせておくと、引っ越し直前に慌てずに済みます。

引っ越し後に必要な11の手続き|必要な申請・期限・費用について

会社の引っ越しでは、公的機関やサービスの契約をしている会社に対するさまざまな手続きが必要となります。各手続きの内容を詳しくみてみましょう。

1 法務局:法人登記変更の手続き

法人は、法務局に所在地を登録しているため、登記の内容を変更する必要があります。手続きの詳細は次のとおりです。

同じ法務局の管轄エリア内で移転する場合

申請内容本店移転登記の申請
窓口エリアを管轄する法務局
必要書類・本店移転変更登記申請書・取締役会議事録または取締役決定書・委任状(代理人が手続きする場合)
【定款変更が必要な場合の追加書類】・株主総会議事録・株主一覧表
手続きの期限移転から2週間以内に提出
費用登録免許税3万円

異なる法務局の管轄エリアに移転する場合

申請内容本店移転登記の申請
窓口旧住所を管轄する法務局
必要書類・本店移転変更登記申請書(2通)・株主総会議事録・株主一覧表・取締役会議事録または取締役決定書・委任状(代理人が手続きする場合。2通)・印鑑届書
手続きの期限移転から2週間以内に提出
費用登録免許税6万円(旧住所・新住所の管轄法務局2件分)

旧住所と移転先を管轄する法務局が異なる場合、それぞれ2通必要になる書類があります。登録免許税の金額も異なるため注意が必要です。

2 市町村役場:市町村税の手続き

会社は従業員の市町村税(住民税)を給与から天引きして代わりに支払っているため、こちらの手続きも必要となります。

申請内容特別徴収義務者の所在地・名称変更届
窓口各市町村の市民税担当窓口(市町村によって異なる)
必要書類特別徴収義務者の所在地・名称変更届出書
手続きの期限変更後速やかに提出
費用無料

変更届の提出に期限は設けられていませんが、なるべく早く提出するようにしましょう。

3 税務署:国税の手続き

国税の手続きは「異動事項に関する届出」(「異動届」の提出)と、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」の2種類があります。

申請内容・異動事項に関する届出・給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出
窓口納税地を管轄する税務署。移転前後で納税地が変わる場合は両方の管轄税務署に提出が必要。
必要書類各種届出書を1部作成して提出
手続きの期限【異動事項に関する届出】異動後速やかに提出
【給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出】開設、移転又は廃止の事実があった日から1か月以内
費用無料

どちらも、窓口および郵送で提出できます。同時に手続きしておくと手間も少なく済みます。

4 都道府県税事務所:都道府県税の手続き

都道府県税の手続きとしては、法人等異動届の提出が必要です。

申請内容法人等異動届
窓口市町村市民税担当窓口(管轄が変わる場合は移転前後の窓口へそれぞれ提出)
必要書類・登記事項証明書・異動の内容が確認できる書類(自治体によって異なる)
手続きの期限おおむね異動から30日以内(自治体によって異なる)
費用無料

提出書類や手続きの期限は、提出先の自治体によって異なります。移転前に電話などで確認しておくと確実です。

5 労働基準監督署:労働保険の手続き

労働基準監督署に対しては、労働保険の手続きが必要となります。

申請内容労働保険名称、所在地等変更届
窓口移転後の所在地を管轄する労働基準監督署
必要書類・労働保険名称、所在地等変更届・添付書類(自治体によって異なる)
手続きの期限移転から10日以内
費用無料

「労働保険名称、所在地等変更届」は、提出時に控えを受け取れるので、保管しておいてください。雇用保険の手続きを行う際に必要となります。

6 年金事務所:健康保険・厚生年金の手続き

年金事務所に対しては、健康保険および厚生年金の手続きが必要となります。提出書類は次のとおりです。

申請内容適用事業所名称・所在地変更届
窓口所在地を管轄する年金事務所(管轄が変わる場合は移転前のエリアを管轄する年金事務所)
必要書類・適用事業所名称/所在地変更届・登記事項証明書
手続きの期限所在地変更から5日以内
費用無料

期限が移転から5日以内と短い点に注意が必要です。なお、窓口での書類提出のほか、電子申請や郵送も可能なので、必要に応じて活用してください。

7 公共事業安定所(ハローワーク):雇用保険の手続き

ハローワークでは、雇用保険の手続きが必要となります。

申請内容雇用保険事業主事業所各種変更届
窓口移転先の所在地を管轄するハローワーク
必要書類・雇用保険事業主事業所各種変更届・労働保険名称所在地等変更届の控え・登記事項証明書
手続きの期限移転から10日以内
費用無料

書類提出時は、労働基準監督署に「労働保険名称、所在地等変更届」を提出した際に受け取れる控えが必要です。先に労働基準監督署の手続きを済ませておきましょう。

8 警察署:社用車の保管場所変更の手続き

社用車を保有している場合、車庫証明の取得および車検証の住所変更が必要です。

車庫証明の取得

申請内容自動車保管場所証明申請
窓口車庫所在地を管轄する警察署
必要書類・自動車保管場所証明申請書・保管場所の所在地・配置図・使用者の住所を確認できるもの
【他社の土地に駐車する場合】保管場所使用承諾証明書
【自分の土地に駐車する場合】保管場所使用権原疎明書
手続きの期限移転から15日以内
費用おおむね3,000円程度

車検証の住所変更手続き

申請内容車検証の住所変更
窓口・陸運局(普通自動車)・軽自動車検査協会(軽自動車)
必要書類・自動車検査証・車庫証明・登記事項証明書
手続きの期限移転から15日以内
費用・登録手数料350円・ナンバープレート取得費用(2,000円程度)

社用車の住所変更は、車庫証明の取得→車検証の住所変更の順に行います。いずれも移転から15日以内の手続きが必要なため、余裕を持って準備するようにしましょう。

9 銀行・クレジットカード会社:登録情報変更の手続き

銀行やクレジットカード会社に情報変更を行う場合、移転後の登記事項証明書と社印、印鑑証明が必要となります。書面での手続きが必要なケースが多いため、移転前に連絡し、必要な添付書類を確認のうえ準備しておきましょう。

ただし、銀行やクレジットカード会社によって、手続きの詳細は異なります。早めに詳細を確認しておくことが重要です。

10 郵便局:郵便物転送の手続き

旧住所に郵便物が届いた場合に備え、郵便物の転送手続きを行っておきます。

申請内容転居・転送サービス(法人転居届)
窓口最寄りの郵便局
必要書類・申請者と法人の関係がわかる社員証や健康保険証などの証明書類・旧住所が確認できる書類(登記事項証明書など)
手続きの期限とくに期限はなし。転送開始日の指定ができるため移転前に手続きするのが望ましい。
費用無料

転居・転送サービスの転送期限は1年間です。住所変更に漏れがあった場合、1年以内に変更手続きをしておきましょう。

11 許可行政庁:許認可の記載内容変更の手続き

建設業許可や派遣事業許可など、何か許認可を受けている場合、こちらも住所変更の手続きが発生します。期限は管轄によって異なりますが、30日以内としていることが一般的。

手続きの詳細は、管轄役所に確認しておきましょう。たとえば、土地・不動産・建設業の許可を受けている場合、変更事由ごとに定められた期間内に、許可を受けた行政庁に変更届などの書類を提出することが決められています。

会社の住所が変わるときに覚えておきたいポイント

最後は、会社の住所を変更する際に、押さえておきたいポイントを2点紹介します。手続きを怠ると罰則が課せられる場合もあるため、よく確認しておきましょう。

1 定款変更が必要になる場合がある

会社の定款に詳細な住所を記載している場合、定款の変更が必要な場合があります。たとえば、所在地について「本店は東京都足立区に置く」としている場合、足立区内の移転であれば変更は不要です。

しかし、足立区外に移転する場合や、番地まで詳細に記載している場合は本店移転時に定款の変更が必要となります。定款の変更には、株主総会の特別議決を行わなければなりません。この決議では、議決権の過半数を有する株主が出席し、なおかつ議決権の3分の2以上の賛成を得る必要があります。

2 登記の申請期限を過ぎると過料が課せられる

登記の申請に関しては、既定の2週間から遅れた場合、罰則が定められています。そのため、手続きを怠ると、裁判所から過料決定通知書が送付されてくる場合があります。申請期限を超過すると100万円以下の制裁金(過料)の対象となります。

多少の遅れであれば、目をつむってもらえたり、数万円の過料で済んだりすることもあります。しかし、申請を怠った期間が長くなるほど、金額が上がる可能性があるため、期限を過ぎた場合でもできるだけ早く手続きを行うことが重要です。

住所変更に伴う手続きは計画的に!

会社の移転には、必要な準備や手続きが多いため、時間のかかるものから優先順位を設定し、計画的に進めることが大切です。手続きが遅れると罰則の対象となることもあるため、注意してください。

ソーシャルインテリアでは、移転先の選定をはじめ、面倒な手続きまで、お客様のオフィス移転をワンストップでサポートしております。「何から手を付ければ良いかわからない」などお困りのことがあれば、ぜひご相談ください。