ファシリティマネジメントは、会社の資産を有効活用したり、長期にわたって使い続ける上で大切な考え方です。特に働き方改革や建物の持続的な活用に注目が集まるようになってから、一層注目を集めるようになりました。
この記事では、そもそもファシリティマネジメントとは何を指すのか、具体的にどのように施策を進めていけば良いのかについて、詳しく解説します。
目次
ファシリティマネジメントとは
ファシリティマネジメントとは、企業が持つ施設や環境を経営資源として有効活用する取り組みです。
ファシリティ(Facility)とは、オフィスや建物、設備、什器など、日々の業務を支えるあらゆるハードを指します。
それらを維持・管理するだけでなく、どう使えば組織の成果を最大化できるかを考えることが、ファシリティマネジメントの目的です。
たとえば、オフィスのレイアウトを見直してコミュニケーションを活性化させたり、設備を省エネ型に変えてランニングコストを削減したりと言った取り組みが、代表的なファシリティマネジメントです。
日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)はこれを次のように定義しています。
「企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」
この定義が示す通り、ファシリティマネジメントは単なる保守業務ではなく、経営の効率化・生産性向上・企業価値の維持を目的とした経営手法のひとつです。
出典:日本ファシリティマネジメント協会「ファシリティマネジメント(FM)とは」
オフィスや設備はコストではなく、戦略資産としてとらえます。その上で、持続的な企業成長を支える基盤づくりを推進することが、ファシリティマネジメントの本懐と言えるでしょう。
ファシリティマネジメントがなぜ重要なのか

ファシリティマネジメントが重視される理由として、企業経営における固定費の重さが挙げられます。
オフィスや建物、設備などにかかる施設関係費は、人件費と同等に大きな支出となることがあります。土地の賃料や光熱費、保守・修繕など、毎月確実に発生するコストでありながら、多くの企業では見えていそうで見えていない領域として改善を後回しにされやすい分野とも言えます。
たとえば、社員数に合わない過剰な広さのフロアを維持していたり、電力消費の大きい老朽化した設備を使い続けたりするようなケースです。これらは施設関連の支出を増大させる要因となり、
企業の財務体質をじわじわと圧迫していきます。
そこで重要になるのが、ファシリティを「経営資産」として戦略的に見直す視点です。施設の利用状況やコスト構造を定期的に可視化し、ムダを減らして投資すべき場所に資金を回すことにより、企業の収益性改善に繋げられます。
LCCについて
ファシリティマネジメントを考えるうえで欠かせない概念がLCC(ライフサイクルコスト)です。
LCCとは、建物および設備の竣工から維持管理、そして処分に至るまでのコストです。初期の建設費用であるイニシャルコスト、光熱費や改修費などの運営の際に発生するランニングコスト、そして解体や処分にかかる廃棄費用の3つで構成されます。
実際のところ、建物や設備にかかる費用はイニシャルコストよりも、ランニングコストの方が大きくなりやすいのが現状です。
ランニングコストがどれくらい大きくなるかはケースバイケースですが、場合によってはランニングコストの3~5倍になるという想定で考えておくべきでしょう。
出典:建築コスト管理システム研究所「100年公共建築のためのコストマネジメント」
ファシリティマネジメントは、このLCCをいかに抑え、限られたリソースを最大限に活かすかを考える実践的な手法です。
ファシリティマネジメントが注目されている背景

近年、ファシリティマネジメントは単なる建物管理ではなく、経営を支える戦略領域として注目を集めています。
その背景には、社会構造や働き方、そしてリスク対応の変化があります。ここでは、特に大きな3つの要因を整理してみましょう。
生産人口の減少
日本では生産年齢人口の減少が続いており、経済全体が長期停滞局面にあります。かつてのように新しい建物を次々と建て替える投資スタイルは難しく、今ある資産をいかに長く・効率的に活用できるかが重視されるようになりました。
こうした状況のなか、既存施設を再活用し価値を維持するための仕組みとして、ファシリティマネジメントの最適化が求められています。
働き方の多様化
フリーアドレスやリモートワークなど、働く場所と時間の自由度が高まる中で、全員が固定席に出社するという従来のオフィス運用の見直しが進んでいます。
従業員のエンゲージメントを高め、柔軟な働き方を支えるには、オフィス環境の最適化が欠かせません。今日の就業スタイルに合わせた空間作りを行うことも、ファシリティマネジメントに含まれます。
あまり触れられることはありませんが、ファシリティマネジメントと働き方改革は、密接な関係にあると言えるでしょう。
震災やコロナなど非常時対応の要請
地震や感染症、さらにはサイバー攻撃など、企業を取り巻くリスクは多様化しています。
これらに備える守りのファシリティマネジメントとして、災害・感染症に強いオフィス設計や、BCP(事業継続計画)対策が重視されています。
設備や環境の面からリスクを最小化し、事業を止めない仕組みを整えることで、施設や設備を無駄にしない企業経営を実現可能です。
ファシリティマネジメントのメリット

ファシリティマネジメントを導入することで得られる効果は、多岐にわたります。
ここでは、特に企業が実感しやすいコスト面と、エンゲージメント面のメリットを中心に整理します。
コスト削減
まず大きいのが、固定費の最適化によるコスト削減効果です。
フリーアドレスやリモートワークの普及により、全社員が常に出社する前提でオフィスを構築する必要性が、以前よりも低下しています。
実際に、同時出社率を見直してレイアウトを最適化するだけで、オフィス面積や賃料を削減できるケースも増えています。
また近年は、消費電力の小さい照明や空調などの機器も次々と登場しています。導入して年月の経った設備は最新のものに更新することで、長期的なランニングコストを削減することが可能です。
従業員のエンゲージメント向上
もう一つの重要な効果が、従業員のエンゲージメント向上です。働く環境の快適さやデザイン性は、モチベーションやチームの一体感に大きく影響します。
フリーアドレスやABW(Activity Based Working)など、多様な働き方を支える柔軟なオフィス環境を整備することで、従業員が自発的に動ける心理的に自由な空間を生み出すことができます。
洗練されたオフィスデザインは企業ブランディングや採用活動にも好影響を与えます。「この会社で働きたい」と思わせる職場環境づくりこそが、これからの人材戦略の中核になると言っても過言ではありません。
ABWについての詳しい解説や、具体的な導入案について知りたいという場合には、以下の記事もぜひ参考にしてください。
ファシリティマネジメントの取り組み方

ファシリティマネジメントの重要性について把握はできても、実際に取り組むとなると、何から始めれば良いかがわからないと感じる方もいるのではないでしょうか。
実のところ、ファシリティマネジメントの範囲は非常に広く、企業によって取るべき施策は大きく異なります。
ここでは上記の疑問を解消するための、多くの企業が取り組みやすく、それでいて成果が出やすい3つの施策を紹介します。
建物や設備、備品の定期的なメンテナンス
基本的なファシリティマネジメント施策であり、なおかつ効果を実感しやすい取り組みが、建物や設備、備品の定期的なメンテナンスの徹底です。
ファシリティは所有して終わりではなく、使いながら維持するものという考え方に基づきます。
LCC(ライフサイクルコスト)の観点から見ても、日常の点検や計画的な修繕は中長期的なコスト削減に繋がります。
たとえば、建物の外壁や配管設備の劣化を放置してしまうと、小さな修繕で済んだはずの箇所が後に大規模工事へと発展し、数百万円単位の費用がかかるケースも珍しくありません。
賃貸オフィスの場合も同様で、日常的な維持管理を怠れば退去時の原状回復費用が膨らむ可能性があります。
また、設備や備品のメンテナンスが行き届いていないと、生産性の低下、さらには労災リスクに直結することもあります。
建物や空調、OA機器などを資産として扱い、定期点検・交換計画を整えることが、ファシリティマネジメントの基本的な施策です。
省エネルギー化の促進
次に挙げられるのが、省エネや脱炭素を意識した取り組みです。これは単に環境にやさしいという話にとどまらず、LCC削減の観点からも極めて合理的です。
照明をLEDに変えるだけで、年間電力コストが大幅に下がることもあります。
その他にも、空調の効率化やエネルギー管理システムの導入、さらにはEV・ハイブリッド車両への更新など、中長期的な設備投資によって、ランニングコストを大きく抑えることができます。
また、省エネ化の取り組みは企業の社会的責任(CSR)やESG経営の一部としても評価されます。
環境配慮の実績を社外に発信すれば、企業ブランドや採用力の向上に貢献するでしょう。
実際に建物の耐震性・断熱性・省エネ性を高めた事例として、大東建託が実現した「本社ビルZEB化(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」があります。
温室効果ガスの排出ゼロを目指した改修プロジェクトの結果、同ビルでは事務所用途部分で基準一次エネルギー消費量から40%以上、建物全体では20%以上削減することができました。
エネルギー消費を抑えることができたことにより今後のランニングコストの大幅な削減にも期待ができます。CSRの促進とコスト削減の両方を実現する、優れた取り組みです。
出典:大東建託「【脱炭素】大東建託、本社ビルを改修しZEB化」
オフィス環境の改善
もう一つ、働き方改革や従業員エンゲージメントの向上とも深く関係しているとされるのが、オフィス環境の改善です。
改善のスケールはさまざまで、レイアウトの微調整や家具の入れ替えといった小規模なものから、フロアリニューアル・移転に至るまで幅広い選択肢があります。
近年では、ABWやフリーアドレスを前提とした設計が主流となっており、業務内容に応じて最適な場所を選べるようにすることで、生産性と創造性の向上に取り組む企業が増えてきました。
たとえば、オンライン会議専用のフォンブースを設置したり、集中作業・雑談・アイデア出しの各エリアをゾーニングするなど、人が働きやすい空間を意図的にデザインする施策への関心が高まっています。
見た目や快適さの向上は、採用・ブランディング面でプラスに作用します。就労意欲を高める空間づくりは、もはや人事戦略の一部と言えるでしょう。
具体的な事例は以下のページで紹介しています。どのような改善施策に取り組むべきかの検討の際には、ぜひご活用ください。
まとめ
ファシリティマネジメントは建物の管理にとどまらず、コスト削減・環境対応・従業員満足度の向上といった、経営全体に関わる重要な取り組みです。
特にオフィスや建物は、ファシリティの中でも予算規模が大きく、その使い方や維持の仕方によって企業の固定費や生産性は大きく変わります。
たとえ自社ビルでなくても、日々のメンテナンスを怠らないことが負担の削減において重要です。賃貸の場合は退去時の原状回復費用を抑え、建物や設備の状態を良好に保つことが、結果的にLCC削減につながります。
さらに、省エネ化やオフィス環境の改善まで視野を広げれば、コストと働きやすさの両面で長期的な効果を得ることができるでしょう。
ソーシャルインテリアは、オフィス移転・レイアウト変更・家具のサブスクリプションなど、ファシリティ改善につながる環境づくりを総合的に支援しています。
オフィス課題の解決策をまとめた資料も公開しているため、ファシリティマネジメントの一環としてオフィスを見直したい方は、お気軽にご相談ください。



