テレワークの推進や事業の拡大に合わせて、オフィス環境を見直したいと考えている企業も多いのではないでしょうか。オフィス改装は企業にとっても従業員にとっても、さまざまなメリットがあります。
この記事では、オフィス改装の流れ、知っておきたい注意点、申請できる補助金や助成金について解説します。
オフィスのデザインや設計については、以下の資料でも詳しく解説しています。
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目次
オフィスの改装とは?似た用語との違い
オフィスの「改装」に似た用語としては、増築・改築・修繕・リフォーム・リノベーションなどがあります。まずは、それぞれの用語の違いをみていきましょう。
1.改装とは?
「改装」とは、主に内外装材を新しくすることを意味し、オフィスの場合は内外装の模様替えを指すことが多く、職場のイメージや使い勝手を大きく変えることが可能です。
リフォームには、改装・修繕・増築・改築といった、さまざまな種類があります。床面積を増やす「増築」、建物の一部を壊して新しく作り変える「改築」はオフィスよりも一般住宅で行われることの多い工事です。「修繕」とは、劣化・不具合が発生した部分を元の状態に戻すための工事で、オフィスビルでは10年〜15年の周期で外壁や空調設備などの見直しを行います。いずれも改装とは異なるため、状況に応じてリフォーム内容を決める必要があります。
2.リノベーションとの違い
改装を含め、リフォームは新しい状態に「戻す」ために行われます。よく似た用語のリノベーションは価値や性能を「高める」ための工事なので、リフォームとは目的が異なります。リフォームは設備を新しいものに取り替えるだけの簡易的な工事もできますが、リノベーションでは間取りの変更を含む大規模なものが一般的です。
イメージする仕上がりによっては、リフォームよりリノベーションが向いている場合もあるため、工事の目的・予算・期間などを比較して最適な方法を選びましょう。
オフィスを改装するメリット
オフィスを改装することで、企業や従業員にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、現状の課題を解決することで得られるメリットを5つ紹介します。
1.業務効率が向上する
従業員の働き方に合ったオフィスに改装することで、業務効率の向上が期待できます。たとえば、オンラインでの打ち合わせが増加した企業では、自席での業務にやりづらさを感じることがあるかもしれません。
そのようなときは、オンライン専用ブースを設置することで、周りの目を気にせず、自らの業務に集中しやすくなります。
2.従業員のモチベーション・エンゲージメントが上がる
オフィスの雰囲気は、従業員のモチベーションやエンゲージメントに大きな影響を与えます。古く薄暗いオフィスでは、社員の満足度は下がり、離職率の増加にもつながりかねません。おしゃれなオフィスに生まれ変わることで、従業員の職場に対する満足度の向上が見込まれるでしょう。
オフィス改装では、「どうすれば快適に働いてもらえるのか」を考えながら、プランを検討していくことが重要です。
3.社内コミュニケーションが活性化される
社内コミュニケーションに課題を感じている企業は、オフィスの改装によって解決できる可能性があります。デスクのレイアウトや動線を見直すことで、新しいコミュニケーション空間を創出でき、従業員同士の交流が生まれやすくなります。
外出の多い営業部門、テレワーク頻度の高い管理部門などは、フリーアドレス制を導入するのもおすすめです。
4.ランニングコストの削減になる
オフィスを改装して、設備を一新することでランニングコストの削減が可能です。LED照明や最新の空調機器は節電効果が高いものが多く、電気代の削減が期待できます。
また、レイアウトのせいで空調効率が落ちているオフィスは、間仕切りを見直すことも重要といえるでしょう。
5.企業のブランディングになる
魅力的なオフィスに改装できれば、企業のイメージアップやブランディングにもつながります。社外の人が訪れるスペースは、「こんなイメージを持ってもらいたい」という視点で、デザインを検討しましょう。
オフィスを改装したあとは、公式サイトやSNSで積極的に発信していくことも大切です。企業の魅力が広く認知されると、採用活動も有利に進めやすくなります。
改装・移転の判断に迷ったら?
オフィスの改装を考えているなかで、「いっそのこと移転するべきなのかもしれない」と悩むことがあるかもしれません。改装すべきか移転すべきかの判断に迷ったときは、次の3点を基準に検討していきましょう。
1.従業員数とオフィスの広さ
まずは、従業員の数に対して、オフィスの広さが十分にあるかを確認します。事業の拡大などで従業員の増員を計画している企業は、改装より移転を検討してもよいでしょう。十分なスペースがあるにも関わらず、オフィスが手狭に感じる場合は、デスクのデザインやレイアウトを見直すだけで改善できるケースがあります。
たとえば、すべてのフロアで同じデスクサイズを採用するのではなく、外出が多い部門はコンパクトデスクに、自席での作業が多い部門は大きめのデスクにするなど、業務内容に合わせたオフィス家具に切り替えていくとスペースに余裕が生まれやすくなります。
2.オフィスの立地条件が悪い
「駅から遠い」「通勤しづらい」「周辺環境が整っていない」など、オフィスの立地条件が悪い場合も、移転がおすすめです。ただし、現在のオフィスから遠すぎる場所に移転すると、通勤時間が長くなる従業員も出てきます。企業側も交通費支給額が増えるリスクを考えなければなりません。
移転を検討する際は、従業員に対してアンケートやヒアリングを行うと、方向性が決まりやすくなります。移転先によっては、メリットよりデメリットが多くなるケースもあるので、新オフィスの場所選びは慎重に進めて行く必要があります。
3.今後の事業計画
オフィスの改装・移転には少なくないお金がかかります。せっかくオフィスを刷新しても、程なくして改装や移転を実施することになっては、コストがかさむ一方です。オフィスの見直しを行うときは、中長期的な事業計画を立てて、現時点でオフィスを改装・移転すべきかを徹底的に考えていきます。
近い将来、社員の増減やリブランディングの予定がある場合は、改装や移転は先送りにすることも考えましょう。
オフィスの改装と移転では、移転のほうが出費が大きくなります。一方で、改装は工事の規模を調節することが可能です。予算が限られる場合は、最低限の改修に留める方法もあります。
オフィス改装をするときの流れ
オフィスの改装は、以下の6ステップで実施します。
- 改装の目的・コンセプトを明確にする
- 依頼先を探す
- 見積りとスケジュールを確認して契約する
- 内装デザイン・レイアウト設計を決める
- 設備・オフィス家具を決めて発注する
- 工事の進捗を確認する
ここからは、工程ごとの内容とポイントを見ていきましょう。
1.改装の目的・コンセプトを明確にする
移転ではなく改装を選んだ理由や、解決すべき課題を明確にします。オフィスにはさまざまな課題があるため、現場のヒアリングを通して、できるだけ多くの従業員から意見を募るようにしましょう。
そして、どのようなオフィスに仕上げたいのかを考えます。たとえば、企業イメージとオフィス空間がマッチしていないことが課題であれば、「オフィスによるブランディング力強化」が改装の目的となります。改装の目的が決まったら、コンセプトに落とし込んでいきしょう。「アットホームな空間」「コーポレートカラーが印象的な空間」など、できるだけ具体的にイメージすることで、その後のステップがスムーズに進みます。
2.依頼先を探す
オフィス改装を依頼する会社を探します。内装会社・デザイン会社・設計会社など、さまざまなパートナー企業がありますが、デザインとプロジェクト管理を一括で行っているところがおすすめです。「候補となるパートナー企業が複数いる」「企業ごとの特徴を把握したい」という場合は、コンペの実施も有効な手段です。
改装の目的・コンセプト、移転先情報、スケジュール、予算などを提案依頼書(RFP)にまとめ、候補となる企業にコンペへの参加を打診しましょう。コンペにて、具体的な改装案を提示いただいた上で、パートナー企業を選定できます。
3.見積りとスケジュールを確認して契約する
依頼したい会社が見つかったら、見積もりとスケジュールを確認します。会社を決めるときは、実績・費用・担当者の対応などから総合的に判断しましょう。デザイン力や提案力だけでなく、自社と同レベルの規模・同じ業界での実績があると安心です。
オフィス改装の費用は相場がわかりづらいため、不明点や疑問点は契約前にすべて解消しておきます。そのほか、追加費用の有無も重要なポイントです。
「担当者との相性がよくない」「レスポンスが遅い」といった場合は、工事の進行に不安が残るため、依頼先の見直しも検討してみましょう。
4.内装デザイン・レイアウト設計を決める
依頼した会社と相談しながら、改装の目的・コンセプトに沿った内装を決めていきましょう。社内で改装の目的やコンセプトがしっかりと共有されていると、依頼した会社との打ち合わせもスムーズに進みます。
内装デザイン・レイアウト設計を決める際は、解決すべき課題を伝えることで、より良い提案がしてもらいやすくなります。改装の方針が決まったら社内外に向けてスケジュールを告知して、工事中も滞りなく業務が継続できるよう環境を整えていきましょう。
5.設備・オフィス家具を決めて発注する
設備やオフィス家具を入れ替える場合は、並行して準備を進めていきます。複合機・シュレッダー・ビジネスフォンなどのリース機器の移動は、専門業者への依頼が必要なケースもあります。セッティング作業に時間がかかることも多いため、メンテナンスをお願いしている会社に事前に相談しておきましょう。
オフィス家具は予算に合わせて、「すべて入れ替え」「一部のみ入れ替え」「既存の家具を使用」から選べます。すべて入れ替えることでオフィスの雰囲気を大きく変えることができますが、予算が限られている場合は、改装後に少しずつ家具を入れ替える方法もあります。
6.工事の進捗を確認する
改装工事が始まったあとも、状況を把握し、問題がないか確認します。工事の進捗を確認したいときは、突然現場を訪れるのではなく、依頼先の担当者に連絡を入れましょう。担当者に同席してもらうことで、「見積もりと同じ材料が使われているか」「スケジュールに遅れはないか」など、細かいチェックがしやすくなります。
思ったような仕上がりになっていない場合は、「イメージと違う」といった抽象的な言葉ではなく、「デザイン案と使われている色味が違う」「指定した素材と違う」など、客観的にも判断しやすい伝え方を意識しましょう。
オフィスを改装するときの注意点
オフィスを改装するときは、事前に確認すべき注意点があります。つづいては、遵守すべき法律や覚えておきたいポイントについて解説します。
1.原状回復しやすさを考慮する
賃貸オフィスでは、原状回復のしやすさを考慮しましょう。原状回復工事では、オフィス家具や備品を撤去するほか、増設・造作したものをすべて元通りにしなければなりません。変更した壁紙や追加したカーペットは、基本的に入居前に同じ状態に戻す必要があります。
原状回復の範囲は、物件によって異なるため、あらかじめ賃貸借契約などで確認しておくと安心です。また、オフィス改装で施工できる範囲は物件ごとに異なります。共用部分は手を加えることができないため、「自社が施工しても問題ない範囲」を正しく認識しておきましょう。
参考『オフィスの原状回復義務の範囲は?費用・流れ・注意点をまとめて解説』
2.事務所衛生基準規則を遵守する
事務所衛生基準規則とは、労働安全衛生法に基づいて定められた、オフィス環境に関する規定です。温度・照明・トイレ・休養室・更衣室・救命用具など、細かく基準が定められており、労働者が快適な環境で働けるよう適宜見直しも行われています。
たとえば、オフィスの温度に関しての努力目標は、これまで17度以上28度以下だったのが、改正後は18度以上28度 以下となりました。企業は改正・見直しに従って、オフィス環境を整える必要があります。
3.建築基準法を遵守する
建築基準法では、建築物の敷地・構造・用途などについての基準が定められており、オフィス改装でも遵守しなければなりません。とくに、注意すべきは通路幅です。火事・地震などが発生した際に避難の妨げとならないよう、定められた通路幅を確保する必要があります。
通路幅は廊下の両側に部屋がある場合は1.6m以上、廊下の片側だけに部屋がある場合は1.2m以上となっています。原則として、通路幅は壁と壁との距離を図りますが、柱や手すりなどの厚みがある場合は、有効幅が狭くなるケースがあるので要注意。従業員が安全に避難できる通路幅が確保できるよう、廊下の突出や障害物についても、しっかりと確認しておきましょう。
参考『オフィスの適切な通路幅は?働きやすいオフィスレイアウトを考える!』
4.消防法を遵守する
消防法とは、火災から国民の生命等を守るための法律です。オフィスにおいては、スプリンクラー・煙感知器・誘導灯などの設置が求められています。オフィス改装で新しく仕切りを設ける場合は、高さと設置場所に注意しなければなりません。高さのあるパーテーションは壁と見なされるため、消火設備や警報設備の見直しが発生するケースもあります。
「防火対象物工事等計画届出書」は、着工する7日前までに管轄する消防署へ提出が必要です。書類の提出は入居者が行うことになっていますが、専門的な内容も含むため、改装を依頼する会社に相談しながら進めましょう。
5.改装中の業務場所を確保する
改装中も通常業務が滞りなく行えるよう、一時的な業務スペースを確保します。比較的規模の小さな改装であっても、資材の搬入で人の出入りが多かったり、作業で騒音が発生したりするため、改装中のオフィスで業務を続けるのはおすすめできません。
同じビル内の空きスペースや、他拠点の事務所などを利用して、改装中も業務が続けられるよう環境を整えます。利用できるスペースが見つからない企業は、短期のレンタルオフィスやコワーキングスペースの活用も検討してみましょう。
6.複数の会社から相見積もりを取る
オフィス改装は、施工面積や工事内容によって費用が大きく変わります。相場もわかりづらいため、複数の会社から相見積もりを取って、おおよその費用感を掴みましょう。相見積もりでは、金額だけでなく、スケジュール・提案力・担当者のレスポンスなども確認してます。
費用が安くても工事期間が長ければ、従業員の負担は増します。改装中の業務場所としてレンタルオフィスを借りている企業は、金額が高くても短期間で施工できる会社のほうが、コストが抑えられるかもしれません。「自社の課題を解決できるようなデザインを提案してくれるか」「トータルで負担を抑えられるのか」など、総合的に判断して、依頼する会社を選びましょう。
オフィス改装時に申請できるの補助金・助成金
補助金は予算や採択件数が決まっているため、申請しても審査を通過できなければ受給することはできません。一方、助成金は要件を満たした企業は原則として支給されます。
オフィス改装を目的とした補助金・助成金は多くなく、「生産性の向上」「IT化の推進」などの手段として「オフィス改装を行う」というアプローチが必要です。
1.ものづくり補助金
ものづくり補助金は、生産性向上を実現するサービス開発・プロセス改善・システム改良を行うための設備投資を支援する補助金です。1年に何度も公募が行われており、要項も補助上限額も申請のタイミングで変わります。
たとえば、申請締切日が令和5年4月19日の14次締切分では、グリーン枠の補助上限額750万円〜5000万円、補助率2分の1もしくは3分の2となっています。補助上限額や補助率は、申請される枠・類型や従業員の人数によって異なりますが、補助金のなかで規模の大きな制度です。オフィス改装で申請する場合は、「温室効果ガス削減」「イノベーションの実現」などをどのように達成していくか証明していく必要があるといえるでしょう。
2.事業再構築補助金
事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナ時代における中小企業の事業再構築を支援する補助金です。通常枠、大規模賃金引上枠、回復・再生応援枠、最低賃金枠などがあり、申請締切日が令和5年3月24日の第9回締切分では、最大で1.5億円の補助額が設定されています。
補助経費の対象例として、建物費(建物の建築・改修)が含まれており、オフィス改装でも比較的活用しやすい補助金といえるでしょう。
3.事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、会社の経営を後継者に引き継ぐ際などに活用できる補助金。3種類の事業型があり、令和4年度当初予算の採択率は経営革新事業が70.4%、専門家活用事業が86.4%、廃業・再チャレンジ事業が80%です。
比較的採択率の高い補助金ですが、事業承継・引継ぎを行う企業を対象としているため、経営者の交代や事業再編・事業統合を伴うオフィス改装時に利用したい制度です。
4.IT導入補助金
IT導入補助金は、ITツールを導入する際の経費の一部を補助することで、業務効率化・売上アップをサポートする補助金です。ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費が補助対象経費となり、2022年度は最大450万円の補助が受けられます。
デジタル化基盤導入類型であれば、PC・タブレット・プリンターなどのハードウェア購入費も補助対象となります。オフィス改装では、「テレワーク推進」「Web会議ルームの設置」などの施策で申請が可能です。
5.受動喫煙防止対策助成金
受動喫煙防止対策助成金は、一定の要件を満たす専用喫煙室、指定たばこ専用喫煙室の設置に必要な経費が一部助成される制度。専用喫煙室は喫煙以外のことはできませんが、指定たばこ専用喫煙室であれば喫煙室内で飲食なども可能です。
ただし、指定たばこ専用喫煙室では加熱式たばこのみ喫煙が認められています。オフィス改装に伴って、これらの受動喫煙防止対策を講じる企業は、助成を受けることができます。
オフィス改装をお考えなら「ソーシャルインテリア」にご相談ください
オフィスの改装を行うことで、業務効率の向上やランニングコストの削減といった効果が期待できます。オフィス改装では遵守すべき法律や活用したい補助金・助成金もあるため、信頼できるパートナー会社に依頼することが大切です。
ソーシャルインテリアでは、オフィス空間の構築・課題解決をトータルでサポートいたします。設計から施工、オフィス家具選びまでワンストップで承っており、お客様の課題を解決できるような内装デザイン・レイアウト設計をご提案をいたします。オフィス環境を変えたいと考えている方は、ぜひお気軽にご相談ください。