• PROJECT
    株式会社明電舎
  • CATEGORY
    レイアウト変更
  • YEAR
    2023

空間づくりのプロセスから共創は始まっている

株式会社明電舎 様

インフラを支える重電メーカーの一角として、発電・送配電などの電力インフラや鉄道などの交通インフラ、電気自動車のモーターや自動車試験装置など幅広く事業展開する株式会社明電舎様へサブスク家具を導⼊いたしました。

CATEGORY
レイアウト変更
YEAR
2023
MEMBER

Direction:Manami Yamamoto / Tomoaki Sumita
FFE:Yuki Nagai

INTERVIEW

インタビュー
株式会社明電舎
DX推進本部 デジタル基盤開発部 データ活用サービス開発課 渡部 勇介 様

新しい技術と価値の創造にチャレンジ

当社は創業から120年以上、お客様が求める製品やサービスを提供することで、社会の発展に貢献してきました。私たちの製品開発は、最初に完成形を定めて、異なる工程の担当者がバトンタッチしながらモノづくりを行う「ウォーターフォール型」と呼ばれる手法を採用しています。作業の進捗やコストを管理しやすく、規模の大きなプロジェクトを、一定の品質で、計画通りに、仕上げることに向いています。この手法はつくるモノがあらかじめ明確で、変化が少なければ、とても有効に機能します。

ところが世の中は、VUCA(ブーカ)*時代と言われる、変化が激しく予測が困難な時代を迎えています。

つまり、変化が少ないことを前提とした、あらかじめつくるモノを明確に定めることが困難なケースが増えてきています。さらに近年では、社会的価値につながる新たな価値を、お客様やパートナーの皆様と一緒に見つけ、カタチにしていくことが求められるようになってきています。このような時代の変化に対応するため、私たちは新たに「アジャイル型」の製品開発に取組み始めました。

この手法では、役割の異なるメンバーがチームを組んで、価値に軸足を置いた製品開発を行います。製品やサービスを短期間で半完成形(プロトタイプ)にし、お客様に評価頂きながらブラッシュアップすることを繰り返します。この場所は、その”アジャイル型の製品開発を実践する場”として、企画しました。

空間づくりのプロセスから共創は始まっている

私たちは、DXの推進に向けて、世の中のトレンドを正しく理解するため、普段から各種イベントやセミナーなどに参加し、情報の収集と共有をしています。その一環として、スタートアップと多様な企業のアセットを連携させる事業共創プラットフォームである『KDDI ∞ Labo』へ、パートナー連合の一員として参加しています。

ソーシャルインテリア様は以前、社名変更前の「subsclife(サブスクライフ)」という名称で、「家具のサブスク」を提供している企業としてこのイベントに登壇されていました。このときは面白いとは思いながらも、接点を持たずに終了しました。後日、「デジタル・ラボ」の企画が具体化した際、一部の家具についてサブスクの検討をはじめたところ、記憶がよみがえり、問い合わせたことが最初のきっかけです。

家具メーカーにこだわりはありませんでしたが、「デジタル・ラボ」のコンセプトに沿い、当社の新たな挑戦が社内外からわかりやすいデザインや配色にしたいと考えていました。抽象度の高い要望を具体化するには、取り扱う製品に制約がなく、フットワークの軽いスタートアップ企業と一緒に空間を創れたことは幸運でした。

ソーシャルインテリア様には、プランニングを行った会社さんとの連携も含めて、私たちのわがままを親身になって対応していただきました。当初、サブスクの導入はインテリアデザインの自由度のみに着目していましたが、SDGs視点で「捨てないモデル」であることにも共感しています。また、導入予算と経費のバランスを取るために、購入とサブスクを組み合わせるという柔軟な対応も提案いただき感謝しています。

アジャイル型アプローチを行う共創拠点『デジタル・ラボ』

「デジタル・ラボ」は、チームで成果を出すという、新しい働き方に対応した当社初の拠点です。また、社内のみならずお客様やパートナーの皆様と新たな価値の創出を目指して、目的の異なる複数のエリアを設けています。

・デザイン思考エリア
問題を見つけ、その解決策を探るデザイン思考は、価値の創出に向けた最初の入り口です。現在、我々はすべての従業員が身に着けるべきリテラシーのひとつと位置付けています。デザイン思考専用のスペースとして、活動をサポートする家具や設備を標準で備え、クリエイティブなアイデアが自然に引き出されるエリアとして設計しています。

・スクラム開発エリア
「デジタル・ラボ」の中央にはスクラム開発エリアがあります。明電舎のアジャイルは、スクラム手法を採用しており、この実践に特化した3部屋を、動くソリューションを生み出す中核としています。実用最小限のプロトタイプを短期間で開発することを繰り返し、常に動くプロダクトを確認できます。スクラムはチームで活動するため、2台の大型モニタと2方向の壁はホワイトボードとなっています。お客さまやパートナーとの共創を想定し、部屋にはスツールや植栽も配置しています。

・オープン/コミュニケーションエリア
緑視率を向上させるシンボルツリーを中心に、各種イベントを想定して柔軟に家具の配置を変更できるのがオープンエリアです。そこに隣接して、偶発的なコミュニケーションや小集団活動をリラックスして行えるよう、ソファやテレビ、バーカウンターを揃えたコミュニケーションエリアがあります。全体をひとつの空間として利用できるよう設計しています。

この他、チーム活動を支える個人の作業にも配慮し、個人が集中できるフォーカスエリアも設けました。屋外の景色(少しだけ富士山も見える)を感じながらリラックスできるレイアウトで、内と外の曖昧さを意識した多様な働き方と選択肢を実現しています。

実は、明電舎のシンボルカラーであるブルーはあえて使わないようにしました。「デジタル・ラボ」は、これまでの明電舎という会社が持つイメージや過去の実績などの枠にとらわれず、フラットなマインドで活動する場所とするためです。この場を利用するすべての人たちが、新しいマインドセットで、新たな価値の創出へ向かえるよう配慮しました。

みんなで創っていく場所だからこそ柔軟に

2022年10月にオープニングセレモニーを行ない、社内でビデオ配信による紹介も行いました。基本的なルールは定めていますが、厳密な運用ではなく、「新たな価値の創出に向かう活動」であれば柔軟に対応しています。逆に、価値の創出につながらない、従来型の会議はお断りしています。いろいろな使い方を試しながら、みんなで共創の場として育てていく方針です。

「デジタル・ラボ」のある沼津事業所では、工場見学や打合せを目的に、多くの訪問者を受け入れています。お客様に限らず、いろいろな方々に、私たちの新しい試みをみて頂き、おはなしを聞かせて欲しいと思っています。そこから何か新しい取組みが始まり、それがビジネスにつながることになれば素晴らしいと考えています。

社内では、デジタル人材育成の場としての活用も始めています。社内向けのセミナーや勉強会、事業部門を巻き込んだデザイン思考の実践などで、デジタル人材に必要なベーススキルの向上を目指しています。また、当社でも技術継承が大きな課題となっています。熟練技術者が持つ知識や技術を若い世代へ伝えるべく、レジェンド級のベテランや分野の異なるスペシャリストがこの場所に集い、若いエンジニアと交流を持つ機会をつくる構想もあります。

本格的な運用が始まり、少なからず改善すべき点がみえてきました。また、現時点では満足していても、時間が経てば新たな発想のための刺激としては効果が薄れてくることも想定しています。今回、ソーシャルインテリア様には「フレキシブルプラン」という柔軟性のあるご提案をいただきました。契約満了前でも一部の家具を入れ替えることができるこのプランにより、定期的な植栽の変更と組み合わせて、「デジタル・ラボ」を常に変化させることができます。当社の変化を象徴する場所として定着させ、世の中の急激な変化に柔軟に対応していきたいです。

*VUCA(ブーカ)とは…Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)という4つのキーワードの頭文字を取った言葉で、変化が激しく、あらやるものを取り巻く環境が複雑性を増し、想定外の事象が発生する将来予測が困難な状態を指します。

株式会社明電舎について

株式会社明電舎は、「より豊かな未来をひらく」という企業使命のもと、重電メーカーの一角として、発電・送配電などの電力インフラや鉄道などの交通インフラ、水処理施設などを支える電気設備を手掛けるほか、電気自動車の駆動モーターや自動車の開発に用いる試験装置などの領域を含めて、国内外で幅広く事業展開しています。
我々は120年を超える歴史の中で培ったものづくり力とサービス力を通じて、より豊かで住みよい未来社会の実現に貢献するため、新たな価値の創造に積極果敢にチャレンジし続けます。

編集後記(広報担当より)

時代はめまぐるしく変化していくものの、やはり自分たちがここで変わるんだというタイミングはなかなか見つけづらいと思います。大手企業でありながら、グループ一丸となって取り組む姿勢はとても勉強になりました。新たな価値創造における変化と共にある家具のサブスク、これからがとても楽しみです。だいぶ先のお話まで盛り上がってしまいました…お忙しいところお話いただきありがとうございました!

Azusa Kurabayashi