社内インフラの整備は、従業員が安全かつ効率よく働くために必要不可欠です。一方で、複雑な配線処理に苦労したり、床がケーブルや電源コードでぐちゃぐちゃになったりしているオフィスは多くみられます。
オフィスの配線にお困りなら、OAフロアを導入することで解決できるかもしれません。この記事では、「これからオフィスに入居する」「オフィス空間を再構築したい」「配線の見た目と機能性を改善したい」といった企業様向けに、OAフロアの選び方・施工方法・注意点などを解説します。
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目次
OAフロアとは?
OAとは、オフィスオートメーションの略称で、オフィスにおける業務の合理化・効率化を意味する用語です。そして、OAフロアは、床を二重構造にすることで配線を収納できる仕組みを指します。本来の床から30〜100mm程度の厚みのフロア専用パネルを敷き詰める「床上げ工事」を行って、二重構造をつくりあげます。
本来の床と実際の床との間に空間ができることで、ケーブルや電源コードなどの配線をすっきりと収納することが可能です。OAフロアは、「フリーアクセスフロア」「二重床」などと呼ばれることもあり、いずれも同義と捉えて問題ありません。
OAフロアを選ぶときに注目すべき4つのポイント
OAフロアを導入したいときに注目すべきポイントは以下の4つです。
1.OAフロアの施工方法
2.OAフロアの配線方法
3.OAフロアの素材
4.OAフロアの仕上げ材
オフィスによって、向いている製品は異なるため、それぞれの違いを把握し、自社に向いているOAフロアを選択することが重要です。4つのポイントについて、特徴・注意点・おすすめの使用シーンを詳しくみていきましょう。
OAフロアの施工方法
OAフロアの施工方法は、下記の2種類あります。
- 置敷タイプ
- 支柱タイプ
施工方法によって施工期間・費用が異なります。一般的には、置敷タイプのほうが、施工期間が短く費用も抑えられる傾向があります。築古ビルなどによく見られる水平でない床への施工、高さを自由に調整したい場合には支柱タイプがおすすめです。
水平でないフロアでも施工可能ですが、凸凹を修正する「不陸調整」を行う場合には工期が長くなる傾向です。強度を向上させるために素材をカスタマイズすると費用はさらに高くなります。
1.置敷タイプ
置敷タイプでは、決まった形のパネルをフロアの床に敷き詰めていくことで、二重構造をつくっていきます。
タイルのように並べて設置していくため、短期間・低コストで施工が可能です。施工するオフィスの広さによって異なりますが、支柱タイプと比べると概ね半分の期間と費用でOAフロアを導入することができます。配線数の目安は、従業員数50名以下のフロアとなっています。
デメリットとしては、フロアの床が水平でないと施工できなかったり、床の凸凹が影響して仕上がりの品質が落ちたりするケースが挙げられます。パネルの形が固定されているので、高さの微調整もできないため、事前に内装業者による床状況の調査をおすすめいたします。現状のオフィスの床が施工上問題なく、50名以下の比較的コンパクトなオフィスフロアであれば、短い施工期間でコストも抑えられる置敷タイプがおすすめです。
施工期間は、50名ほどを収容するオフィスであれば1週間ほどを目安に考えるといいでしょう。また、工事費用は資材価格や工事業者、工事体制によって大きく変動しますが、2700円/㎡~が目安です。見積や工事内容をしっかり確認しつつ、不明なところがあれば工事業者に質問するようにしましょう。
2.支柱タイプ
支柱タイプでは、床に固定した脚の上にパネルを並べることで二重構造をつくっていきます。
支柱の高さを自由に調整することができ、水平ではない床や段差があるオフィスでも施工が可能です。支柱脚が床にしっかりと固定されるため、耐震性・耐荷重性能に優れていて、サーバールームにも向いています。配線数の目安は、従業員数50名以上のフロアとなっています。
デメリットとしては、耐震性を高めるために一部ビスを使うため、本来の床を傷つけてしまう点が挙げられます。また、置敷タイプよりも施工期間が長く、費用も高くなる傾向があります。置敷タイプのOAフロアが施工できない場合は、支柱タイプを採用することで、見た目も美しく安全性も高いOAフロアの構築が可能です。
施工期間は、施工する面積によって変わりますが、最低でも2週間です。施工費用も、置敷タイプと同様にケースバイケースで変動しますが、5700円/m²〜が目安となります。
OAフロアを活用した配線方法
OAフロアを活用した配線方法は2種類あります。
- パネル下配線
- 溝配線
置敷タイプは、パネル下配線と溝配線から選べます。支柱タイプはパネル下配線が基本です。大人数のフロアならパネル下配線が、敷設後に配線変更する可能性があるなら溝配線がおすすめです。
1.パネル下配線
パネル下配線とは、支柱や脚の間の空洞部分に配線を収納する方法です。置敷タイプ・支柱タイプともに、本来の床と実際の床の間を広く使います。パネル下配線は配線容量が多く、自由度の高い配線設計が可能です。
ただし、施工後の配線変更が難しいため、頻繁にインフラの切替があるオフィスには不向きです。
2.溝配線
溝配線とは、パネル上部につくった溝に沿って配線を収納する方法です。支柱タイプはパネル下に大きな空洞ができる構造になっているため、基本的に溝配線が採用されることはありません。
すでに決まったかたちのパネルを並べていく置敷タイプは、溝配線・パネル下配線から選べます。溝配線は溝に沿ってケーブル・電源コードを収納していくだけなので、混触のリスクが軽減できます。また、配線の変更・増設がしやすい点もメリットです。ただし、配線の容量が少ないので、機材の多いフロアや従業員数が多いオフィスには不向きです。
OAフロアの素材
OAフロアの素材は4種類から選べます。
- スチール製
- アルミ製
- 樹脂製
- コンクリート製
置敷タイプの施工方式では樹脂製とコンクリート製、支柱タイプの施工方式ではスチール製とアルミ製が採用されています。素材によって価格・耐荷重・歩行時の音の鳴り方などが異なります。
今回は耐荷重性能を評価する単位として「N(ニュートン)」を用います。Nとは、国際単位系(SI)で定められた力の単位です。1000Nは約100kgに相当します。OAフロアの耐荷重を判断する重要な数値となるため、素材を選ぶ際はしっかり確認しましょう。
1.スチール製
スチールは主に支柱タイプで採用されている素材です。耐荷重の種類が豊富にあり、一般的なオフィス用の3000N・5000N、サーバールーム用の6000Nなどから使用シーンに合わせて選ぶことができます。スチール製は不要となったパネルをリユース・リサイクルしやすいため、一般企業のほか官公庁などでも広く導入されている素材です。
強度も高く歩きやすいですが、歩行時にポコポコとした空洞音が鳴ることがあります。スチールは磁石に反応する金属となるため、精密機械を多く設置するフロアは避けたほうが安心です。
2.アルミ製
アルミは主に支柱タイプで採用されている素材です。耐荷重の目安は3000〜5000Nで、使用シーンに合わせて選ぶことができます。
もともと強度が高い素材ですが、加工処理を施すことで、さらなる性能アップを図っています。耐震性・耐久性・信頼性に優れていて、OAフロアのパネルとしても50年以上の実績があります。アルミは非磁性体の金属となるため、サーバールームや実験室にも適しています。デメリットとしては、資材費・施工費が高額になりやすい点が挙げられます。
3.樹脂製
樹脂は主に置敷タイプで採用されている素材です。耐荷重の目安は2000〜3000Nで、スチール・アルミ・コンクリートと比べると低めの数値となっています。
一般オフィスでは問題なく使えますが、重量のあるオフィス家具・機材や金庫などを設置する場所では避けたほうがよいでしょう。また、ビスで固定しない置敷タイプは耐震性がやや弱くなります。また、空洞音が鳴りやすいことも理解しておきましょう。。
樹脂製はほかの素材と比べると軽量で、短期間での施工が可能。建物への負担が少ない点も樹脂製のメリットです。OAフロアの素材のなかでは、もっとも手ごろな価格設定となっており、小規模なオフィス・店舗におすすめです。
4.コンクリート製
コンクリートは主に置敷タイプで採用されている素材です。耐荷重の目安は3000〜5000Nで、スチール・アルミと同等程度の数値です。
コンクリート製のパネルは歩行性に優れていて、空洞音もほとんど気になりません。機材の誤作動・通信不良の原因となる「ノイズ」を防ぐ効果が見込める点もコンクリートのメリットです。
ただし、樹脂製と比べると、資材費・施工費は高くなります。さらに、処分する際は産業廃棄物扱いとなるため、他の素材よりも手間とコストがかかります。置敷タイプでは軽量の樹脂製、重量のあるコンクリート製から選ぶことになります。樹脂製は一般オフィスを想定しているため、サーバールームや書庫といった特殊なフロアには、コンクリート製がおすすめです。
OAフロアへの仕上げ材
OAフロアに施工できる仕上げ材は2種類あります。
- タイルカーペット
- 塩ビタイル
仕上げ材としてOAフロアとの相性が良いのはタイルカーペットです。屋外作業が多く、靴が汚れやすい職種や出入りが激しい職場などは、お手入れしやすい塩ビタイルがおすすめです。また塩ビタイルにはフローリング調、石目調などデザインのバリエーションがあります。デザインにこだわりがある場合は、次の特徴をよく理解した上で選ばれるといいでしょう。
1.タイルカーペット
タイルカーペットとは、1辺50cm程度のタイルサイズにカットされているカーペットです。カーペットの織りのバリエーションはかなり豊富で、色・素材・厚みも選べます。オフィスの雰囲気に合わせて最適なデザインを選べます。
タイルカーペットには、遮音・防臭・制電の各種機能が備わっています。また、厚みのあるタイルカーペットはやさしい歩き心地を実現するため、来客エリアでよく採用されます。簡単に剥がせる、という特徴もあり配線の変更・増設も手軽に行うことができます。
2.塩ビタイル
塩ビタイル(ビニル床タイプとも呼ばれます)とは、合成樹脂でつくられたタイル状の仕上げ材です。タイルカーペットと比べると厚みがないので、フロアの素材によって顕著に床の不陸を拾ってしまい、歩きづらさを感じることがあるかもしれません。
塩ビタイルは薬品・油に強く、水で拭くだけで簡単に汚れを落とすことができます。靴に汚れがつきやすい仕事、薬品を使用するフロアなどは、掃除のしやすい塩ビタイルが向いています。
またOAフロアへの仕上材として塩ビタイルを選ぶ際には、置き敷きタイプのものを選びましょう。中にはOAフロアに対応していない塩ビタイルもあるため、迷った際は設計会社や内装業者に相談することをおすすめ致します。
OAフロアの床上げ工事ができない場合は?
OAフロアを導入するためには、最低でも2.5m以上の天井高がおすすめです。天井が低すぎると圧迫感を感じやすくなるだけでなく、大型のオフィス家具などが収まらなくなる可能性もあります。
床上げ工事ができない場合には、アンダーカーペット配線を検討してみましょう。アンダーカーペット配線とはタイルカーペットや塩ビタイルの下に敷く、厚さ1mmのフラットケーブルです。床が凸凹することもないので、歩行性にもさほど問題ありません。
オフィス空間の構築なら「ソーシャルインテリア」がサポートします!
OAフロアを導入するためには、施工・配線・素材・仕上げ材など、さまざまな選択肢から最適なものを選ばなければなりません。ソーシャルインテリアではオフィスの状況をしっかりと把握したうえで、貴社にぴったりの製品をご提案いたします。
お伝えいただいた予算・施工期間に応じて、OAフロアの代替となるアンダーカーペット配線などもご紹介させていただきます。オフィスに関するお困りごとをトータルでサポートいたしますので、まずはお気軽にご相談ください。