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PROJECT大手外資系自動車メーカー様(デザインエリア)
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SCALE451.10㎡
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CATEGORYオフィスリニューアル
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YEAR2025
【事例紹介】大手外資系自動車メーカー(デザインエリア)
伝統の技が息づく、機能と意匠を両立したグローバル拠点
- SCALE
- 451.10㎡
- CATEGORY
- オフィスリニューアル
- YEAR
- 2025
- MEMBER
Sales:Yuma Uehara
Project Management:Rumiko Sato
Construction Management:Shinri Suzuki / Ryo Ozawa
Design Direction:Kanako Yoshizawa(KASASAGI Inc.) / Kenshiro Miyano(SAYS)
Interior Coordination:Takuya Oura
デザイン業務を支える機能性と意匠のこだわりを両立した空間

以前のオフィスは現在の半分ほどの広さしかなく、大型ワークステーションや液晶タブレットを置いた固定デスクを並べるだけでほとんど余白がない状態。デザイン業務に欠かせないビデオウォールやモックアップ、VRによる実寸評価のためのスペースも十分に取れず、限られた一室に多くの機能を詰め込むしかありませんでした。
そのため、レビュー時にはデスクを動かしたり、VR検証の際には周囲を片付けたりと、用途に応じて都度レイアウトを変更する必要があり、効率的とは言い難い運用を余儀なくされていました。
加えて、グローバル拠点にふさわしい水準が求められる一方で、当時のオフィスは蛍光灯の照明に一般的な什器が中心で、壁や床もほとんど手を加えられていませんでした。造作家具を一部で取り入れてはいたものの、全体としては「オフィス然とした印象」が強く、デザインスタジオとしての魅力や説得力に欠けていました。
そのため、外部の顧客やパートナーを迎える場としては心もとなく、社員にとってもクリエイティビティを高めにくい環境であったことから、空間を刷新する必要性がいっそう明確になっていったのです。
業務だけではない新たな可能性が広がるこだわりの設え

デザインエリアのプロジェクトは開始が遅れたこともあり、まずは自分たちでたたき台をまとめるところからスタート。その後、ソーシャルインテリア様から私たちの意図を汲んだ具体的な提案をいただきました。
特に造作家具は空間の大きなポイントとなり、ビデオウォール前のスタジアムベンチは、我々の想像を超える仕上がりでした。
一方で、基本レイアウトが固まりつつあった段階で「まだオフィス感が強い」との課題も浮上しました。そこで思い切って方向転換し、ナチュラルウッド基調から町家の焼き板を思わせる黒壁を採用。
落ち着いた雰囲気に加え、液晶タブレットへの映り込みを抑える暗めの照明計画も取り入れたことで、社内デザイナーから高く評価されています。
さらに、エントランスには月と太陽をモチーフにした和紙装飾を設置し、来訪者がベンチに腰掛けて眺めたり、その場でコミュニケーションもとったりできるように工夫。ホスピタリティと印象的な体験を兼ね備えた空間となっています。
Design Comment — Kanako Yoshizawa(KASASAGI Inc.)
外資系自動車メーカー様のデザインオフィスということで、初期のコンセプト打ち合わせの時から、日本的なデザインやその魅力を空間に反映したいと考え、沢山ディスカッションさせていただきました。単なる意匠的な切り取りではなく、本物の伝統技術や自然素材も積極的に取り入れ、全国各地の第一線で活躍されている職人さんにご協力いただくことで、緻密な職人技と感性が結集した空間になっています。
その一つひとつには、手仕事ならではの奥行きや自然素材の魅力、温度が宿り、日々ここで働かれるデザイナーの皆さまに新たなインスピレーションをもたらす存在になればと願っています。
また、海外からいらっしゃるお客様にとっても、日本文化やそこで生み出されるクリエイティブが語りかけるような空間となり、生まれてくるデザインの可能性を共有する場としてお寛ぎいただけたら嬉しいです。
多様な空間設計がもたらした働き方と意識の変化

リニューアル後の最も大きな変化は、自席以外の「居場所」が生まれたことです。リフレッシュエリアやミーティングエリアなど、多様な空間が加わったことで、社員が気分や業務に応じて場を使い分けられるようになりました。
また、スタジアムと呼ばれるビデオウォール前のエリアは、全席から画面を視認できるレイアウトとし、大規模なデザインレビューを円滑に実施できるように。これにより情報共有やコミュニケーションの効率が大きく改善されています。設備更新によってビデオ会議にも対応できるようになり、グローバル拠点とのやり取りがスムーズになりました。
加えて、白いカーペットや二段構成のスタジアムベンチを取り入れたことで、社員の間に自然と「きれいに使おう」という意識が芽生えました。レビュー時には多くの人が集まる場でありながら、土足を避けるなど秩序が保たれ、スタジオ全体の美観維持につながっています。
今回のリニューアルによる満足度は高く、今後も現場のアイデアやニーズを取り入れながら、より働きやすく魅力あるオフィス空間へと進化させていきたいと考えています。




