-
PROJECT大手外資系自動車メーカー(R&Dエリア)
-
SCALE1,674.00㎡
-
CATEGORYオフィスリニューアル
-
YEAR2025
【事例紹介】大手外資系自動車メーカー(R&Dエリア)
和の趣で迎える、人がつながるオフィス
複数の課題を機に、働く場のあり方を再構築

もともとは、グループ内の販売法人とオフィスエリアを共用していましたが、販売法人の人員が増えてきたことから、先にそちらの移転が決まりました。その際、原状回復が発生することになり、オフィスをどう活用していくかを考えるタイミングになったのです。
実際、私たちの部署でも増員が進んでいて、明らかに座席が足りておらず、短期的に座席を増やすなど応急的な対応でしのいでいましたが、それでは根本的な解決にはなりません。今後の増員にも耐えうる、しっかりとした受け入れ体制を整える必要があると感じていました。
また、オフィスはやや無機質な印象で、植物や木の温もりといった自然の要素はほとんどありませんでした。レンタルの小さな植栽はありましたが、空間全体の“温度感”が足りないというか、もう少し居心地のよさを感じられるようにしたいという思いもありました。
さらに、部署全体が集まれるような場所がなく、社内で大人数が一堂に会せるスペースをつくりたいという法人長の意向もありました。そうした背景もあり、今回のリニューアルでは、レイアウトを含め、さまざまな観点からオフィス環境を見直しました。
“和”の要素と眺望を活かした印象に残るエントランスへ

今回のリニューアルで、特に印象に残っているのはエントランスまわりの空間提案です。
海外からのゲストを迎える場でもあるエントランスには、しっくいの壁や和紙のスクリーン、温かみのある木材などを取り入れ、“和”の要素を意識したデザインを素材選びの段階からご提案いただきました。
ARIAKEをはじめとした国産の木製家具を中心に構成された空間は、ただ家具が並んでいるのではなく、全体の雰囲気と調和するように丁寧にプランニングされていて、非常に印象的でした。実際に来訪された方々からも「日本らしさが伝わる」と好評で、とても満足しています。
また、エントランス脇のラウンジスペースは、当初は会議室としての活用を想定していましたが、「せっかくなら眺望を活かした空間にしたい」という法人長の意向もあり、オープンな設計へと変更しました。窓からはベイブリッジが一望でき、訪れた方にも特別感を味わっていただける場所になったと思います。
デザイン面ではもうひとつ、「海が近い」という立地を活かしたいという社内の声がありました。そこから「海をモチーフにした喫茶店のような空間」というテーマが生まれ、社内のコーポレートカラーでもある紺色をアクセントとして採用しています。海を思わせる落ち着いた色味が空間に自然と溶け込み、椅子の張地など細部にも使われることで、全体に統一感が生まれました。
さらに、執務室の中央には、人が自然と集まれる“タウンホール”のようなオープンスペースを設けました。以前のオフィスにも小さなフリースペースはありましたが、人が集まる習慣は根づいていませんでした。今回は従業員の動線上にその場を配置したことで、立ち話や雑談、ランチなど、偶発的なコミュニケーションが生まれやすくなっています。設計の意図が、日々の働き方にきちんとつながっていると感じられる点も、今回のリニューアルの大きな成果のひとつです。
偶発的コミュニケーションの創出と働きやすさの向上

リニューアル後、最も実感しているのは、オープンスペースを中心とした偶発的なコミュニケーションが生まれやすくなったことです。タウンホールを執務室の中央に設けたことで、社員同士がすれ違いざまに立ち話をしたり、ランチをとったりと、自然な交流が生まれています。また、社内のイベント会場としても積極的に活用され、社内の「人が集まる場所」といえば“タウンホール”が定着しつつあります。以前は小さなフリースペースがあったものの、そこに人が集まる習慣がなかなか根づかず、今のような動きは見られませんでした。
当初一番の目的だった“増席”も実現できたことで、業務上の窮屈さや不便さが解消されました。これまでは、入社しても席が確保できないケースもあり、その都度対応に追われていましたが、今では安心して新たに入社するメンバーを迎えられる状態になっています。
また、空間の印象が変わったことで、来客対応の面でも良い影響が出ていると感じています。特にエントランスや会議室などの共用エリアは、清潔感とデザイン性が両立されていて、来社された方からも好印象を持っていただくことが多いですね。
振り返ってみても、リニューアル前に抱えていた主要な課題 ── 増席、来客対応、集まれる場の確保といった点は、いずれもクリアできたと感じており、満足しています。
健康と快適性を高める、職種に寄り添うオフィス

今回の移転では、働く人の健康を支える環境づくりを、より意識的に強化していきたいという想いがありました。日々の業務において、少しでも身体的な負担を減らし、より快適に働ける空間を整えることは、安全衛生の視点からも重要だと考えているためです。
その一環として、昇降デスクの導入も進めました。今回は一部の導入にとどまりましたが、適度に姿勢を変えられることで身体への負担が軽減され、社員の作業への集中度も高まっている印象です。今後は、より多くのエリアへの展開も視野に入れ、導入を進めていきたいと思っています。
また、研究開発職という職種の特性から、一般的なオフィスとは異なる環境が求められる場面もあります。現在、机上パーテーションが半数ほど残っているのもその一例ですが、VDT作業(情報機器作業)による身体的負担を軽減する工夫や改善策は、引き続き積極的に検討していきたいと考えています。
さらに今後は、リフレッシュスペースの充実にも注力したいと感じています。R&Dエリアでは中央のタウンホールを除き、気軽に休憩やマインドリフレッシュできる場所が限られているため、オンとオフを切り替える場がやや不足しています。初期段階では“縁側”のようなスペースもご提案いただき、魅力的な内容でしたが、最終的には見送る形となりました。
限られたスペースをどう活かすかは常に議論の対象となりますが、業務に直接関係するエリアだけでなく、気持ちをリセットできる場所も、長期的なパフォーマンス向上には欠かせない要素だと考えています。
今後はこうしたリフレッシュ空間も、業務に貢献する環境の一部として、積極的に提案していきたいと思います。



