近年のオフィスでは、従業員が働く環境の快適性を重視しており、そのなかでもグリーンを取り入れるレイアウトが注目されています。オフィスに観葉植物を採用している企業は多いですが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。
本記事では、観葉植物を取り入れたオフィスレイアウトのポイントやオフィス向きの観葉植物を紹介します。観葉植物を取り入れた企業事例もまとめているので、ぜひ参考にしてください。
目次
オフィスにグリーンを取り入れるメリット
グリーンには、安らぎや癒しの効果があるといわれています。オフィスにグリーンを取り入れるメリットを従業員・企業双方の観点から見ていきましょう。
- ストレス緩和・リラックス効果
- 眼精疲労の抑制
- 空気清浄・調湿効果
- 企業イメージの向上
1. ストレス緩和・リラックス効果
オフィスにグリーンを取り入れることで、従業員のストレス緩和・リラックス効果が期待できます。環境省の「オフィス緑化に関する優良事例調査報告書」では、グリーンを導入したことで、約8割の人がリラックス効果を実感したという結果が発表されています。
また、国土交通省の「都市の緑量と心理的効果の相関関係の社会実験調査について」では、緑視率が高いほど安らぎを感じる人の割合が高いことがわかっています。緑視率とは、視界内にあるグリーンの割合を示す指標です。都市緑化においては、緑視率25%以上になると「緑が多い」と感じはじめる傾向にあります。
参考:環境省 オフィス緑化に関する優良事例調査 報告書
参考:国土交通省 都市の緑量と心理的効果の相関関係の社会実験調査について~真夏日の不快感を緩和する都市の緑の景観・心理効果について~
2. 眼精疲労の抑制
目が疲れたときは、グリーンを見ることで疲労が抑制できます。実際に、愛媛大学農学部では、眼精疲労の抑制に関する次のような実験を行っています。
実験名 | 植物の種類による視覚疲労緩和効果の違い |
被験者 | 愛媛大学農学部 学生11名 |
実験内容 | 30分間パソコン作業を30分間行う植物(または、壁)を5分間見る上記動作を6回繰り返す |
用意したもの | 緑色の植物(カポック4鉢)斑入りの植物(ポトス2鉢・マッサンギアナ2鉢)赤色の植物(アンスリウム2鉢・ドラセナ(赤)2鉢)植物なし(壁) |
測定方法 | フリッカー値(目の疲れの指標)をフリッカー値測定器で計測 |
実験結果 | 「緑色の植物」と「斑入りの植物」で視覚疲労緩和の効果が高い |
この実験では、華やかな赤色を含む植物より、緑単色の植物の方が目の疲れには効果的だという結果になりました。職場にグリーンがあることで、働きながらでも従業員の目を疲れにくくできるのです。
参考:愛媛大学農学部 Q:植物には目の疲れを癒す効果があるの?
3. 空気清浄・調湿効果
オフィスにグリーンを取り入れることで、自然の力を活用して空間をきれいに保つことができます。葉緑体をもつ植物は、太陽を浴びることで光合成を行います。光合成では、空気中の二酸化炭素と根から吸収した水を材料にして新鮮な酸素が作られます。植物によっては、有害化学物質を除去してくれるものもあるようです。
また、観葉植物はオフィス内の乾燥対策にも有効です。グリーンには調湿効果があるため、加湿器の代わりとしても使えます。愛媛大学が発表した論文「観葉植物が室内の温熱環境および温熱快適性に及ぼす影響」では、夏は湿度が高くなる可能性について触れられていますが、現代はエアコンによる乾燥が懸念されているため季節に関係なく一定の効果が見込めます。
参考:愛媛大学 観葉植物が室内の温熱環境および温熱快適性に及ぼす影響
4. 企業イメージの向上
グリーンを取り入れることで、企業イメージの向上が期待されます。オフィス環境の整備に力を入れているというだけでも、働きやすさや生産性の向上、企業価値に配慮されていることがわかり、企業イメージアップになるものです。なかでも、緑が多く使われている空間を魅力的だと感じる人は多いのではないでしょうか。
おしゃれなオフィスは従業員のモチベーションが向上したり、来客者に好印象を与えたりと、さまざまなメリットがあります。また、企業イメージが向上すると、「優秀な人材が確保しやすくなる」「自社の認知度が上がる」などの好循環が生まれます。
観葉植物を取り入れたオフィスレイアウトのポイント
さまざまなメリットがあるグリーンですが、置く場所によってオフィスが狭く見えたり、メンテナンスの手間が増えたりしてしまうケースもあります。
- 設置場所に応じて観葉植物の種類や設置方法を選ぶ
- オフィス内の緑視率は10〜15%にする
- 手入が困難な場所は造花を使用する
- 配置・メンテナンスの計画を立ててから導入する
ここからは、観葉植物を取り入れた効果的なオフィスレイアウトのポイントを解説します。
1. 設置場所に応じて観葉植物の種類や設置方法を選ぶ
観葉植物の設置方法には、次の4種類があります。
- 鉢に植える
- 吊り下げる
- 壁に掛ける
- 間仕切りと組み合わせる
もっともスタンダードな鉢に植える方法は、小さなサイズから大きなサイズまで選択肢が豊富です。存在感のある大きいサイズは、エントランスや応接室など高級感を演出したい場所に向いています。吊り下げ・壁掛け・間仕切りとの組み合わせは、デスク周りなど立体的にグリーンを配置したいときにおすすめ。その他、日光の当たる時間や背の高さ、成長速度も考慮して観葉植物の種類や設置方法を選んでいきましょう。
2. オフィス内の緑視率は10〜15%にする
先ほど紹介したとおり、緑視率とは視界内にあるグリーンの割合を示す指標です。豊橋技術科学大学・長崎大学・日本テレネットの連携による研究では、オフィスの緑視率は10〜15%が最適だという結果が発表されています。
そのため、オフィスの快適性を考えるうえで、緑視率10〜15%を目指すようにしましょう。従業員への効果を重視したい場合は、デスク周りにグリーンを配置するのが効果的。緑視率は、専用の計算ソフトや画像編集ソフトで測ることができます。
参考:室内植物によるオフィスワーカーのメンタルヘルスケアに関する実証研究
3. 手入が困難な場所はフェイクグリーンを使用する
オフィス内のすべての場所に観葉植物を設置する必要はありません。手入れが困難な場所は造花を使用することで、管理の手間が軽減できます。
フェイクグリーンには一部を除き空気清浄・調湿効果はありませんが、フェイクグリーンでもストレス緩和や眼精疲労には一定の効果があるといわれています。
4. 配置・メンテナンスの計画を立ててから導入する
オフィスにグリーンを取り入れるときは、次の点に注意してレイアウトを考えていきます。
- 手入れのしやすさ
- 他のインテリアとの調和
- メンテナンスコスト
- ビルの管理規約の確認
とくに、賃貸オフィスの場合は、ビルの管理規約でプランターや大型の植物の設置が禁止されている場所が設定されていることがあります。本物の植物が置けないときは、フェイクグリーンや緑系統の壁紙での代用を検討してみましょう。
オフィスにおすすめの観葉植物7選
オフィスにおすすめの観葉植物として、7種類をピックアップしました。
- パキラ
- ポトス
- アイビー
- モンステラ
- アルテシマ
- ベンジャミン
- ガジュマル
それぞれの特長や設置におすすめの場所を比較して、自社のオフィス空間にぴったりのアイテムを選びましょう。
1. パキラ
パキラはサイズも豊富で、どのような環境でも育てやすい観葉植物です。親しみやすく優しい印象なので、作業デスクの周辺やリラックススペースへの設置に向いています。ただし、どちらかというと優しく可愛らしい印象になりやすいため、役員室や応接室には不向きなオフィスもあるでしょう。
2. ポトス
つる性観葉植物のポトスは、「天井から吊るす」「間仕切りと組み合わせる」など、さまざまな見せ方ができるアイテムです。暑さや寒さに強く日陰でも育てやすいため、廊下を彩るインテリアとしてもおすすめ。品種によって葉の色のが異なるため、オフィスの雰囲気に合わせて選ぶことができます。
3. アイビー
アイビーは星のような形をした葉っぱが特徴のグリーンです。可愛らしい見た目は観葉植物のなかでも人気が高く、空間をおしゃれに見せることができます。小さな葉っぱをつけながら垂れ下がるようにつるが伸びるので、壁に飾るとオフィスの緑視率が高まります。
4. モンステラ
熱帯雨林に自生する観葉植物・モンステラは、空間を華やかに演出したいときに向いています。ハート型の葉っぱに大胆な切り込みや穴が入る品種は重厚感があり、応接室や社長室、エントランスのインテリアとの相性もよいでしょう。
5. アルテシマ
アルテシマは光沢のある大きな葉っぱが魅力のグリーンで、オフィス用の観葉植物として取り入られることが多いゴムの木の仲間です。アルテシマはラテン語で「もっとも背が高い」という意味を持ち、真っすぐ伸びるものもあれば、柔らかな曲線を描いているものもあります。エントランスなどの広い空間に、鉢植えでの設置が向いているでしょう。
6. ベンジャミン
丸みのある小さな葉が特長のベンジャミンは、原産国のインドや東南アジアでは街路樹としても用いられているグリーンです。幹をらせん状に編んで育てた株は、ポップでおしゃれな印象があり、オフィス全体が華やぎます。葉が落ちやすい植物なので、掃除しやすい場所に設置するのがおすすめです。
7. ガジュマル
ガジュマルは観葉植物の定番です。沖縄の精霊・キジムナーが宿る木としても知られており、「多幸の木」と呼ばれることもある縁起の良い植物です。太く伸びる幹が特徴で、デスクのうえに置ける小さなものから、空間のシンボルとなるような大きなものまで品種も豊富です。幹の形も1本ずつ違い、愛着がわきやすい植物といえます。
観葉植物を取り入れた企業事例
株式会社朝日ネット様
モベンシス株式会社様
株式会社SunAstarisk様
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