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PROJECT株式会社河野
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CATEGORYオフィス構築
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YEAR2021
INTERVIEW
インタビュー代表取締役専務 河野 一哉 様
140年の歴史ある企業、思い入れのあるオフィスにサブスク導入の決断
当社は、明治14年に香川県高松市で創業した、140年に渡り陶器を提供している会社です。
戦争で家屋や商品がなくなってしまった危機的な状況がありましたが、私の曽祖母が、そこからなんとか立て直して、会社を大きくしてきたという歴史があります。当時、焼け野原になった土の中から食器を引っ張りあげて、長い付き合いのあるメーカー様と一緒にリアカーで売り歩いていた、という話も残っているんです。
それは75年程前のお話なりますが、その頃に建てた建物を、約35年前に新築並の改装を行った社屋が、現在の香川の本社ビルとなります。
祖父は元々すごく物を大事にする人間だったので、什器など備品は当時のまま残っており、良く言えば、すごくレトロな空間です。綺麗に利用されており、慣れてしまえば全く問題のないオフィスではありました。
しかし、どうしても昭和感が漂っているため、初めてオフィスを訪れた従業員はびっくりしていました。視点を変えてみると、初めて来社するお客様も同じ気持ちになるのではないか?と思いました。
何か手を入れたいと、移転をするのか改装をするのか、いろいろと考えていましたが、新会社の設立や、新規事業の立ち上げも重なっていたため、どうしても出費がかさむ時期でした。さらに、コロナウイルスの影響でどこまで経営が苦しい時期が続くのかもわからない状況もあり、収益体制強化のための投資も行っているところでした。
そんな中で、少しでも年間の出費を減らしながら、今あるオフィスの改装を実現できないか模索していたところで、ソーシャルインテリアさんに声をかけました。もともと、食器のサブスクリプションモデルを検討していたところでご紹介いただいましたが、サービス自体が気に入っていたという経緯もあり、せっかくの機会なので利用することに決めました。
景気が落ち込んでいるときこそ、攻めの姿勢を
そもそも、コロナ渦では、みんなの気分が沈んでいるものの、私自身に思わぬ時間ができたことで、ソーシャルインテリアさん含め、様々な繋がりができました。
景気が落ち込んでいるときこそ、いろいろなことが変わるチャンスだと捉え、今このタイミングで動いています。たとえ1年や2年、仕事がなかったとしても、5年後6年後の仕事をつくっていくためには、時間のあるうちに、しっかり準備をしておこうという気持ちでした。
実際に、オフィスの賃料も値段が下がっていたり、ライバルが少ない状況下で有利になる場面も多く、東京のオフィスは広さや立地からすると、安く借りることができたため、その分の資金を他にまわすことができます。
受け継がれてきた物を残しながらのアップデートは『レトロモダン』で体現
東京のオフィスを改修したときは、主に中古家具を配置し、什器関係のコストを下げることをメインとしていました。こうしたいというイメージはありつつも、インテリアデザインについてまでは、なかなか踏み込むことができませんでした。
今回の香川の本社オフィスについても、既存の什器を使用する予定だったため、新しいオフィスを作ろうとしても、どうしても古さは残ってしまいます。そこで、その特徴を活かした『レトロモダン』をテーマにデザインを、インテリアコーディネートの要望としてお願いしました。コストをかければもちろん良いものができるとは思うものの、建物が古いこともあり、今後何十年も使用するわけでないためコストは下げたいといった中で、折衷案を持ってデザインしていただき、提案にはとても満足しています。
また、プラスアルファの提案もあり、どうしてもこれははずせないんです!と懇願されたエントランスの植物は最初の印象も良く、オフィスは社内外でも評判の声がとても嬉しかったです。株式会社河野の140年の歴史を見ても、なかなか無いような、貴重な移転になったと思います。自慢のオフィスなので、ぜひ遊びに来てください!と言えるきっかけにもなっています。
もともと、ビル自体は巨匠に建ててもらった立派なビルなのですが、内装は古くなってしまっていたので、そこを改善できたのが息を吹き返したようで、本当に良かったです。
良い食器も良い家具も、また価値が見直されていく時代
業務用食器はほとんど、良いものを安く提供するというのが鉄則となっています。ホテルでは、量を必要とするので、高くて良いものばかりを利用するわけにはいきません。私たちがホテルで食事をするときに、良い食器だな、と思うようなものが、意外と手に届く値段で利用できるということを伝えたいと思っています。
また、形にこだわると仕舞いづらく、1年ともたずに買い替えとなってしまい、こだわろうと思えば思うほど、代替サイクルが早くなります。シンプルで汎用性の高いものがよく買われるのが、今までのトレンドでした。安くて良いものは、ずっと使ってもらえる可能性が高いのです。ただ、それだけではつまらないので、サブスクリプションで変化を加えていくということも考えています。
ちょうど、古き良き日本の伝統文化は、今の形にあっているのではないかと思います。嫁入り道具で良い食器を持っていく、家を代々継いでいく、という考え方があるから、家具はしっかりした造りのものを修理しながら、ずっと引き継がれていました。今はまた、「良いものを長く使っていく」という考え方に戻ってきている気がします。
ですから、当時のような職人さんの価値をあげて仕事を作っていくことと、しっかりと正しい価値を消費者へ伝えていくことが、これからのチャレンジになります。たとえ儲からなくても、敢えて反骨精神を持って、食器アートなど様々な角度からサービスを提供していきたいと思っています。