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PROJECT株式会社DEPOT
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CATEGORY家具コーディネート
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YEAR2023
INTERVIEW
インタビュー代表取締役社長 宮川 史織 様
ブランディングで社会を豊かにする会社、DEPOT(デポ)とは
株式会社DEPOTは、ブランディング事業をメインとして、企業や自治体から受託し、クリエイティブの制作という形でブランディング支援を行ってきた会社です。シェアスペース事業は、コロナ以降の新しい取り組みとして立ち上げました。
私たちのテーマは、「社会を豊かにする仕事」にクリエイティブの力を掛け合わせることです。
これから取り組みを加速させていくシェスペース事業で、「社会を豊かにする」をどのようにして実現していけるかということを考えたときに、その地域の事業者さんと一緒にその場を創り、まちの方々と一緒に育てていくという在り方が、これから私達が進むべき場作りの道なのではないかと思って、拠点作りを始めたところです。
まず、自分たちのオフィスの空いた時間にスペースを貸し出すというところからスタートしたシェアスペース事業ですが、コロナ禍においてオフィスの在り方が見直される中で、自社のオフィスについても検討しなければなりませんでした。
そんなときに、山梨でペレットストーブの販売設置を行う「笹本環境オフィス」の笹本さんからショールーム移転の相談を受け、何社かで場を共有して使うということを一緒に考えていった結果、『studio pellet』というシェアスペースを立ち上げることになりました。
『studio pellet』は今年で5年目になり、本当にいろいろな方との繋がりが生まれ、複数の会社が入っているからこそできる、地域が温まるような面白い動きが生み出される場所となりました。
これからも、その地域の事業者さんと一緒に場所を育てるというシェアスペースのあり方を、これから私たちがいろいろな場所に広げていきたいなという思いがあります。
知識の光でまちを照らす「読書と対話のラウンジ」ができるまで
甲府市中心街はかつて非常に栄えていた街でしたが、人口減少や高齢化に伴い、現在ではシャッターがおりているお店が多くあります。
その中に、創業100年以上の『春光堂書店』という本屋さんがありますが、その隣も同様にシャッターが降りていて空き店舗がになっていたため、本屋さんがその場所をなんとか有効活用できないかと悩んでいました。
ちょうど、私たちがシェアスペース事業をこれから展開できないか考えていたタイミングと重なったので、私たちから「シェアスペースを一緒に作りませんか?」と投げかけて、企画提案をさせていただいて作ったのが今回の場所『TO-CHI(トーチ)』になります。
私たちがその本屋さんと一緒に作って一緒に育てていく場所ということを考えたときに、やはり本のいいところは、知識を共有できるところにあると思っています。
春光堂書店さんは読書会をずっと長くやられています。読書会は、一冊の本をテーマにいろんな方が語り合うコミュニティとかサロンのようなものです。その取り組みがすごくいいなと思って、もっと長く続けてさらに広がっていくと、素敵だなと思いました。
今までも地域の事業者さんのブランディングを受けていろいろやってきた私たちですけれども、その地域の事業者さんたちが培ってきたものを、私たちの切り口でまたいろんな形で発展させていくことを使命としています。
この春光堂書店さんは、ずっと「春日町に知識の光を発信していく」というテーマでやってきました。その思いを、創業者の方が『春光堂』という名前に込めたという話があります。
そういった思いをより実現するためにこの地を共有するという点で、読書ができるラウンジ空間を作れないかという考えがまず最初にありました。
そこでできたのが、『TO-CHI(トーチ)』内にある「読書と対話のラウンジ」というコンセプトのラウンジ空間です。家具の選定においては、ソーシャルインテリア様にお世話になったところでもあります。
『TO-CHI(トーチ)』が目指すのは山梨のハブ
春光堂書店の今までの企画に限らず、今後はいろいろな取り組みができるようにした結果、『TO-CHI』は、ラウンジ・ギフトショップ・レンタルスペースの3つの機能を兼ね備えた施設となりました。
できるだけ色々な方に利用してほしいので、ラウンジはドロップイン利用が可能です。美味しいコーヒーやお茶をご自由にお飲みいただきながら、ゆったり読書したり、仕事をしたりすることが可能です。また、レンタルスペースとして貸切もできるので、ミーティングに利用することも可能です。基本的にはDEPOTか春光堂書店のスタッフが必ずいるようにしていて、コミュニティマネージャーの役割もしています。
また、商店街の入口側にあるショップ空間は、山梨を含めた地方の”豊かさ”をテーマに、私たちがセレクトした商品を取り扱うギフトショップとしています。ショップ空間は全て動かせる什器を使用しているので、ラウンジ空間も一体でレンタルスペースとして広々と利用できます。そのために、オンライン配信設備の機材なども常設しました。
これから、読書会だけではなく、好きなものを語り合える会だったりトークイベントだったり、そういったものもいろいろやっていきたいです。地元の方はもちろん、観光でこられた方、出張で来られた方、さまざまなタイプの人がふらっと集まって、山梨の情報がよくわかる情報になればいいなと思っています。
“空間”をブランディングする上での家具の選び方
私たちは様々なデザイン提案を行っていますが、インテリアはインテリアの専門家に相談してみたい、という思いがありました。これまで空間デザインを行うときには、感性をたよりに家具を選んできましたが、インテリア特有の知識や、短時間で膨大な家具情報を探すのに苦労していました。今回はより最適な家具選びをするためにプロにお願いしようと決めました。
そこで、ソーシャルインテリア様について知り、最初は「サブスク」という言葉が気になりました。いったいどういう仕組みなのか、どういうことをやっていただけるのか、とにかく興味があって問い合わせをしたのが始まりです。
実際にサービスの説明をしていただいたのですが、インテリアコーディネーターが無料で家具の提案もしてくれると聞いて、「本当にそんなうまい話があるのか!」と初めは疑い深い気持ちがありました。私たちもブランディングの提案をするので大変さがよくわかるのですが、無料ということでクオリティがどれくらいなのかが、提案前はわからなかったためです。
しかし、実際ご提案いただくと、デザインだけで選ぶのではなく、「このコンセプトならこのブランドの理念が近いですね」というようなお話もいただき、私たちが思い描くコンセプトを踏まえて、一緒に空間を作り上げていただいていることで、私たちの考えを共有できました。山梨と東京という距離がありつつも、数あるうちのひとつの業者同士のお付き合いという形ではなく、人同士でものづくりをしている実感が安心に繋がりました。思いが通じる人に選んでもらいたかったので、嬉しかったです。
また、私たちのシェアスペースはいろいろな使われ方をすることを前提としているので、汎用性が重要だと思っています。そうなると、ひとつの用途だけでしか使えない家具は合わないと思っていたため、「”スタッキングができるけど見栄えする家具”だったらこういう家具があります」というような、プロによる提案が受けられました。デザインは思いのままに、家具の機能も諦めることなく、長い目で見てとても良い家具を選定することができました。
家具選定はもちろん、内装工事側のスケジュールに合わせたメーカーさんとの交渉もスムーズに行っていただき、空間が出来上がるまで親身になっていただきとてもありがたかったです。
豊かな空間づくりに通ずるサスティナビリティ
音楽配信のサブスクリプションのイメージが強くあったため、家具のサブスクサービスが想定とは違う部分もありました。トータル費用は購入するのとは変わらないし、むしろサポート費用などプラスでかかってしまうものもあります。
ただ、長い目で見たときに、購入も返却も使い続けることもできるという出口の選択肢が広がることが良いなと思いました。事務所の引っ越しの際も、家具を捨てるのか売るのか、どのみち人の手がかかるのでとても大変だった記憶があります。循環する仕組みがあるサービスを利用していれば、自分たちの使い終わりを気にする必要もありません。
今回は「知」をテーマに、人と対話したりインプットしたりする豊かさを考える場所になればいいなと思って作った拠点でもあります。そのため、建物や使う家具にサステナビリティを感じる豊かさを生み出すものを使いたいという意図もあって、サービスの特徴が私達の想いとも通じるものでもありました。
※TO-CHIに関する記載はインタビュー当時の情報です