オフィスの天井は、室内の雰囲気や印象を左右する重要な要素です。天井の種類や高さは、物件の構造や契約条件などで左右されるため、先に調べておく必要があるでしょう。
本記事では、オフィス天井の代表的な種類や工法の特徴、オフィスに適した天井の高さについて解説します。オフィスのリニューアル検討時や移転先の内覧時など、オフィス天井の仕上げを検討する際の参考にしてみてください。
オフィスの天井の種類3つと特徴
オフィスの構造には、大きく分けて「直天井」と「吊り天井」の2タイプがあります。直天井は、屋根裏や上の階の床裏に直接、天井材を張って仕上げるものです。一方、吊り天井は屋根裏などの構造体から吊り材を用いて下地材を吊り下げ、その表面に天井ボードを取り付けます。
直天井は、天井の高さを確保できるため開放的な空間を演出しやすく、地震などで天井材が落下してくる心配が少ない点が特徴です。ただし、天井裏の空間がない分、照明器具や空調設備の音が出やすい可能性があります。
一方、吊り天井の場合、天井裏のスペースにダクトや配管、照明配線などを納められます。スペースの分だけ天井高が下がることで、場合によっては圧迫感を感じる場合があります。
また、吊り天井は「在来工法天井」「システム天井(ライン天井・グリッド天井)」「スケルトン天井」という3つの種類に分けられます。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
1.在来工法天井
在来工法天井とは、天井の下地材に岩綿吸音板や化粧石膏ボードなどの仕上材を張る工法です。代表的な化粧石膏ボードには、「ジプトーン」と呼ばれる吉野石膏株式会社の商品があります。
ジプトーンは縞(しま)模様の不規則な穴が開いたデザインで、ネジが目立ちにくく、仕上がりの美しさが魅力です。また、価格が比較的安価で、オフィスや学校、病院など幅広い施設で使われています。
メリット
在来工法天井のメリットとして、以下の点が挙げられます。
- 材料を安く調達しやすい
- 使用する資材の種類によっては吸音性や断熱性が期待できる
- 照明や空調設備の種類や位置を比較的自由に決めることができる
- 法律の範囲で不燃クロスや塗装など仕上げを変えられる
デメリット
在来工法天井の主なデメリットは、以下の通りです。
- パーテーションや照明、空調など天井設備を移動しにくい
- デスクや間仕切りのレイアウト変更への対応が難しい
- 水回り設備空間への使用が難しい場合がある
在来工法の天井では、工事が完了した後でレイアウトや設備を調整することが難しいため、よく確認した上で進めることが重要です。
2.システム天井
システム天井は、下地材と仕上げ材が一体化されており、工期短縮やコスト削減が見込めます。ただ、デザインの自由度に制限があるため、見た目にこだわりたい場合は注意が必要です。
システム天井には、「ライン型」と「グリッド型」の2種類があります。それぞれの概要とメリット、デメリットについて詳しく見ていきましょう。
ライン天井
ライン天井とは、天井の仕上げ材と照明や空調、火災探知機などの設備機器をまとめて組み立てるシステム天井です。室内側から見たときに、照明などの器具がライン状に並んでいることが名前の由来とされています。
メリット
ライン天井のメリットは、以下の通りです。
- 照明や設備のスパンを任意で決められるためレイアウトに合わせやすい
- デスクを照明と並行に配置することで机の照度を均一化しやすい
- 従来と同じ天井材を使用できるため費用を抑えられやすい
- 天井裏の配管や配線次第ではレイアウト変更にも柔軟に対応できる
デメリット
ライン天井で考えられるデメリットとして、以下が挙げられます。
- 天井材に照明器具が組み込まれており、照明の方向を調整しにくい
- 縦揺れに弱い傾向があり、地震など大きな衝撃で仕上げ材が落下する可能性がある
- 天井裏が吹き抜けのため遮音性に影響する可能性がある
グリッド天井
グリッド天井とは、天井の下地材が格子状で、その上に仕上げ材や照明がパネルごとにはめ込まれたタイプの天井です。一般的には600㎜(60cm)または640㎜(64cm)の格子を作り、天井材や照明などの設備を組み込みます。
メリット
グリッド天井のメリットは、以下の通りです。
- 仕上げ材や照明を部分的に取り外せるため、天井裏の点検がしやすい
- 部分的な入れ替えが可能で、レイアウト変更にも柔軟に対応できる
- 下地材が格子状で安定性があり、仕上げ材が落下しにくい
- ライン天井よりも耐震化しやすい
- 仕上げ材が均一に並んでおり、見栄えが良い
デメリット
グリッド天井のデメリットとして、以下が挙げられます。
- 仕上げ材が軽いため、天井材の材質やサイズによっては吸音性が劣る場合がある
- ライン天井などに比べると高額な場合が多い
- 仕上げ材を下地材に載せている状態のため、地震など縦方向の揺れにより落下する可能性が高まる
3.スケルトン天井
スケルトン天井とは、仕上げ材などによる天井の仕上げを行わず、建物の骨組みである躯体(くたい)やコンクリート、配管、エアコンなどの設備がむき出しの状態の天井タイプです。カフェやレストランなどに多い工法でしたが、近年はオフィスにも採用されています。
メリット
スケルトン天井のメリットは、以下の通りです。
- 仕上げ材を設置しない分、場合によっては天井高が50cm以上高くなり、空間が広く感じられる
- 圧迫感の少ない開放的なスペースを構築できる
- 室内全体が明るく感じやすい
- 特徴的なスタイルを演出できるため、カフェ風、ガレージ風などのインテリアと組み合わせると意匠性が高まる意匠性が高く、洗練されたおしゃれな空間を演出できる
天井をスケルトンにすることで、クロス仕上げにありがちな無機質さを軽減できるのもメリットです。
デメリット
スケルトン天井のデメリットとしては、以下の点が挙げられます。
- 元の天井の解体や配線の移動などに手間とコストがかかる
- 天井高が高くなり空間が広がる分、冷暖房が効きにくい
- 吸音性を備えた仕上げ材がなく、音が反響しやすくなる可能性がある
- ビルの構造や建築基準法などにより施工できない場合がある
- 退去時の原状回復費用が高額になる可能性がある
オフィスの天井の高さ
オフィスの天井高は、建築基準法において2.1m以上と定められています。実際には、古い建物では2.4m〜2.6mが平均ですが、新しいビルでは2.8m以上確保しているケースも多く見られます。
また、オフィスのフロア面積によっても適切な天井の高さは異なります。例えば、1,000㎡以上の広いオフィスで圧迫感を抑えるためには、3m以上が理想的とされます。
オフィスの天井の高さが十分でないと、窮屈な空間で居心地が悪くなり、集中力や業務効率に悪影響を及ぼす場合もあります。とはいえ、ただ天井が高ければいいわけでもないため、適切な高さを設けることが重要です。
加えて、OAフロアの導入を考えている場合には、床下にケーブルを敷くためのスペースが必要なため注意しましょう。
OAフロアの具体的な高さや種類などについて、詳しくは下記記事をご覧ください。
目的やイメージにあわせてオフィスの天井を選ぼう
オフィスの天井は、快適なオフィス環境を構築する上で重要なポイントの1つです。工法や種類ごとのメリット・デメリットを踏まえ、適した形式を選ぶ必要があります。また、建物や契約条件などによっては施工できない天井のタイプもあるので、事前に確認しておくと無難です。
ソーシャルインテリアでは、オフィス空間のデザインやレイアウト変更における実績が豊富です。移転やリニューアルに伴い、天井の種類や高さにあわせて最適なプランをご提案可能ですので、以下よりお気軽にお問い合わせください。