提供:旭川家具工業協同組合

ユネスコ創造都市旭川の”デザイン週間”として発展した「ASAHIKAWA DESIGN WEEK」と連携し、2022年に立ち上げられた産地展「Meet up Furniture Asahikawa 」。

「家具に出会う。産地で、会う。」をコンセプトに、旭川に拠点を置いたメーカーを主にした地場産業の魅力を発信し、建築家やデザイナー、バイヤーといった業界のプロからも多くの注目を集めています。

今回ソーシャルインテリアは、第2回目の開催となる「Meet up Furniture Asahikawa 2023」に参加しました。本記事では、現地を通して感じた旭川家具の魅力や、オフィスでも活用できるものづくりのまちならではの製品をご紹介します。

Meet up Furniture Asahikawaとは?

提供:旭川家具工業協同組合

「Meet up Furniture Asahikawa」は、産地で開催する展示会の価値を改めて問い直す「産地再考」を通じて、旭川の優れたデザインとものづくりの価値を再発見することを主眼に置いたイベントです。

第2回目となる「Meet up Furniture Asahikawa 2023」は、6⽉21⽇から25⽇まで旭川デザインセンターで開催。旭川市、東川町、東神楽町、当麻町に拠点を置く44メーカーが出展し、全国から8,900人が来場しました。

旭川家具の拠点で感じる歴史と技術力

イベントのメイン会場である旭川デザインセンターでは、出展企業の商品展示だけではなく、旭川家具の歴史や技術力・デザイン力、そして多様性を垣間見れるような特別な展示スペースも。以下でご紹介していきます。

国際家具デザインコンペの歴史を紐解く「IFDA Archives」

提供:旭川家具工業協同組合

その名の通り、まるで美術館にいるような感覚でじっくりと作品を眺めることができる「ADC MUSEUM」。その中にある「IFDA Archives」では国際家具デザインコンペティション旭川(IFDA)の入賞・入選作品の一部をなんと過去30年以上に渡るものまでセレクトし、展示していました。

ユネスコ・デザイン都市、旭川の産業観光拠点としてリニューアルした旭川デザインセンターの新たな象徴といえるでしょう。

近代旭川家具の歴史を感じられる「Asahikawa Chairs History」

提供:旭川家具工業協同組合

IFDA Archivesを通って奥に進むと、世界的に著名なデザイナーによってデザインされた椅子や、現地の職人の技と木質感の美しさが表現された様々な旭川家具が時系列順に並んだ広間が現れます。

ここまで多くの椅子を一挙に見れることは、ショールームでさえ中々ありません。近代旭川家具の歴史と技術力を感じるスペースに、圧巻の一言でした。

旭川ならではの匠の技を体感「旭川の特注家具展」

提供:旭川家具工業協同組合

特注家具の魅力を一堂に集めた「旭川の特注家具展」。
特注家具はメーカーやブランドの名前が控えめに扱われることが一般的ですが、ここでは各メーカーの技術力と創造力を存分に体感することができます。

実際に納品された案件の写真も同時に見ることができるため、それぞれの家具がどのように現場で使われているかまで、想像できる工夫がされていました。

ソーシャルインテリアが注目するメーカーのブース 9選

ここでは、Meet up Furniture Asahikawa 2023の出展企業のなかから、印象に残ったブースや現地のショールームをご紹介します。

オフィスや公共施設にもマッチするプロダクトもPick upしているので、ぜひチェックしてください!

カンディハウス

提供:カンディハウス

創業以来、地球環境への想いと、感性豊かなデザインを追求しながら、旭川でのものづくりにこだわり続けている「カンディハウス」

 今回、「TSU-NA-GU」をテーマに、来場者とともにアイデアを語らうといったコンセプトでライフスタイルの提案を行っていました。

現場にたつ営業のリアルな意見から開発された「イコロ リビング」(画像)は、都心部のマンションにも納品しやすいコンパクトな設計のシステムソファー。ただし、「掛け心地はコンパクトにしない」という開発時の目標通り、適度な硬さで心地よい座り心地です。

cosine

提供:cosine

木のぬくもりを感じられるかわいらしいデザインが特徴の「cosine(コサイン)」は、創業から35年の歴史を感じられる特別な展示に。年表通りにブースをまわれば、創業当時から今に至るまで材料を無駄にしない取り組みをしていたことがよくわかります。

創業2年目に開発されたという美しいデザインの「fioretto コートスタンド」はオフィスの執務室や会議室にもおすすめの一品です。

大雪木工

提供:大雪木工


大雪木工が取り組む「大雪の大切プロジェクト」。8年目となる今年は「作りたい気持ちが大切」をテーマに掲げ、作り手がワクワクしながら開発した製品の数々を発表しています。

普段は倉庫だという工場近くのスペースを開放してメインで展示されていたのは、今まで家具材としてあまり使われてこなかった「センの木」を使用した家具たち。北海道の森林の持続可能性を考えて開発された「セン」を使った新商品は、軽くて丈夫なので、不特定多数が使用するオフィスのシーンにもぴったりです。


TIME&STYLE

提供:TIME&STYLE

展示している商品には、今年のミラノデザインウィークで発表された新作も紹介しているTime & Style(タイム アンド スタイル)のブース。

ドリルデザインによる、交差する背もたれのスポークとアームの美しさが際立つ「ダイヤモンド バック」や、Claesson Koivisto Runeによってデザインされた「Drop paper lamp」は、旅館や和テイストなホテルの空間とも調和するでしょう。


ササキ工芸

コンセプトの異なる3つのコレクションを中心にブースを展開していた「ササキ工芸」。

 クラフトマンシップと機械加工、双方のよいところを活かしたSASAKIオフィシャルコレクションの商品は、細部までこだわったデザインと彩り豊かなカラーが目を引きます。

日本有数の産地と協力して生み出されたPirkamonrayke(ピリカモンライケ)は漆塗りや金箔、彫金など和×洋の大胆なデザインで海外進出も視野に入れているそう。コーリアン®(人工大理石)を使用したsupernova(スーパーノヴァ)のプロダクトは、キッチンのシンクなどに使われた生産端材を利用しています。

arflex

ソファの座り心地の肝となる”ウレタン構成”は、その種類や組み合わせ方を変えることで、感触や座り心地が大きく変わります。arflexの展示は、硬さの異なるソファサンプルを座り比べたり、ウレタンサンプルを並べ替えたりして、来場者自身でソファの座り心地を徹底解剖できるという非常に面白い内容でした。

さらに、最上級の座り心地を実現したというソファ「CASTELLO」の展示も。包み込まれるようなソフト感がありながら、姿勢の安定は保つので、オフィスのラウンジスペースやマンションのエントランスなどにおすすめのプロダクトです。

匠工芸

提供:匠工芸

「つくっているのは、心地です。」をテーマに、使い心地とデザイン性の高さが両立したものづくりを行う「匠工芸」。

今回は、”2023年ハンス・J・ウェグナー賞”を受賞しているデンマークの家具デザイナー兼家具職人、アンカー・バック氏と開発した新商品を中心に、デンマークの暮らしを表現したブースを展開していました。

新作「Indsande DAYBED (インセンヌ ディベッド)」は座面が浅めで小柄な人でも座りやすいため、日本の住環境にぴったり。シンプルでありながら、ボタンタフティングと木材の美しさが際立つので、ホテルやレジデンスのエントランスにもマッチしそうです。

東10号工房(E10)

提供:東10号工房

家具ブランドmonokraft(モノクラフト)を主宰するデザイナーである清水徹氏と、家具工房enao(エナオ)の家具職人、遠藤覚氏によって設立された、東10号工房(E10)。お二人はスウェーデンの美術工芸学校「Capellagården」で出会ったそう。

時間と手間をかけて細部まで丁寧につくられた家具に、思わずその場でしばらく見惚れてしまうほどでした。北欧デザインからインスピレーションを受けた美しいデザインの家具を採用することで、人々がせわしなく働くオフィスの中に、安らぎと癒やしの空間を与えてくれるのではないでしょうか。

いさみや

提供:いさみや

オフィスや公共施設、店舗などの造作家具を多く手掛けている旭川の老舗メーカー「いさみや」。「LiKids」「PON FURNITURE」をデザインしたS&O DESIGNの清水久和氏と共同で開発した「TOE FURNITURE」を中心とする展示を展開していました。

「町じゅうに木のぬくもりを」という会社のコンセプトを思い出させるような、角の無いやさしいプロダクトは、オフィスのラウンジや食堂といったシーンでも、新たなコミュニケーションを生み出してくれるでしょう。

家具産地だからこそ参加できる特別なイベント「meet up」

提供:旭川家具工業協同組合

産地展とはいっても、ただ家具を見られるだけのイベントではありません。
家具製作の現場を生で体感できたり、ものづくりに関わるプロや専門家のトークイベントを聞けたり…1日の終りにはカクテルアワーまで。
イベントに散りばめられていた、家具にまつわるあらゆる「出会い」をご紹介します。

家具製作の現場を生で体感「Meet up / Open Factory」

普段中々見れないものづくりの現場を間近に見ることができる、オープンファクトリー。
ソーシャルインテリアはカンディハウスとTime&Style、それぞれのツアーに参加させていただきました。

1.カンディハウス

提供:カンディハウス

旭川デザインセンターから車で5分とほど近い場所にカンディハウスの本社(旭川ショップ)・工場はあります。

家具製造の工程によって分かれている工場の中は迷ってしまいそうなほど広く、機械の規模も桁違い。家具製造の要となるCNC加工機(図面データに基づいて木材の加工を行う機械)は、なんと全部で15台もあり、同じ敷地内の4つの工場を合わせて約9,830㎡という驚きの広さです。

脚物の生産を主とする東工場では近代的な加工機械と人の手で行う仕上げにより、美しいデザインの椅子が作られていく瞬間を見ることができました。

提供:カンディハウス
提供:カンディハウス

工場の隣にあるショールームでは、木のぬくもりを感じるリビング・ダイニング家具や、心地よさはそのままにワークスペース用に活躍するアイテムを多数見学できます。一際目を引いたのは「COSONCO QS(コソンコクス)」(画像)のブース。カンディハウスとソメスサドルによって作られたアートオブジェは、見ているだけで引き込まれるような、独特な存在感を放っていました。

2.Time&Style

流行や時代に流されない、永く使い続けられる家具づくりを行うTime&Styleの工場は、東川町の豊かな自然のなかにありました。

ツアーの最初に目に入ったのは積み上げられた道産のナラの丸太(画像)。入荷した丸太は、なんと一本一本職人たちが年輪をカウントし、産地を記録しています。木が育った年数や環境を思い描きながら家具づくりに携わることで、職人たちの意識が変わったそうです。

また工場の中は、低温バイオマス乾燥機やNC加工機(図面データに基づいて木材の加工を行う機械)などの機械もありましたが、目に留まったのは職人の手仕事。たとえば、研磨の作業はLEDライトで木材の表面の僅かな凹凸を見つけ、素手で状態を確認しながら仕上げています。

全体の造形はもちろんのこと、細部まで美しいTime&Styleの家具は、上記のようなこだわりの中で生まれていることを目の当たりにしました。

家具産地ならではのコラボトーク「Meet up / Cross Talk」

提供:旭川家具工業協同組合

ここでしか見ることのできないトークイベント「Cross Talk」。ソーシャルインテリアは2日目のイベントに参加しました。

ハンス・J・ウェグナーの評価を高めたとされる人物に贈られる「ウェグナー賞」。その第一回受賞者である椅子研究家の織田 憲嗣氏と、2023年に同賞を受賞し、現在匠工芸と共に製品開発を行なっている家具デザイナー兼家具職人のアンカー・バック氏が、ウェグナー作品の真髄と二人から見た旭川家具について語るという、贅沢な内容です。

アンカーバック氏のこれまでデザインしたプロダクトや先日発表した新作について、織田氏のウェグナー氏への取材秘話、デンマークのヨアキム王子からポスターを贈呈されたときの話、お二人が最も好きなウェグナーのチェアについてなどなど…ここでは語りきれないほど、興味深いトークが繰り広げられました。

トークタイムの終盤では、現状の旭川家具の課題と未来について語る織田氏。旭川、そして日本の家具が国際的に発展していくためには何が必要なのか、その場にいた人々が改めて考える機会になっていたのではないでしょうか。

新しい出会いと歓談の場「Meet up / Cocktail Hour」

提供:旭川家具工業協同組合

6月22日のイベント終演後開催された、ものづくりの産地だからこそのコミュニケーションが楽しめる「Cocktail Hour」。
地元のドリンクをお供に、来場者・出展企業関係なく交流を深めることができる空間では、多くの人が新しい出会いや懐かしい再会を楽しんでおり、その光景がこのイベントの成功とさらなる発展を象徴しているようでした。

~特別編~ 魅力あふれる家具産地、東川町

ここまでは、Meet up Furniture Asahikawaについて振り返ってきましたが、最後に旭川家具の約3割が生産されているとされる東川町の、家具にまつわる素敵な取り組みについてご紹介します。

#01「君の椅子」プロジェクト

「君の椅子」プロジェクトという、東川町の取り組みをご存知でしょうか?

東川町で新たに生まれた命に対して、「生まれてくれてありがとう」「君の居場所はここにあるからね」といった想いを込めて、居場所の象徴としての「椅子」を贈る取り組みです。

贈られる椅子はデザイナーによってデザインされたオリジナルの一点もの。椅子のデザインは毎年変わり、名前や生年月日、プロジェクトロゴなどが刻印されており、生まれた子どもや家族にとってかけがえのない思い出の品になります。

本プロジェクトの発起人である磯田氏の“経済性や利便性だけでなく、地域社会の優しく、柔らかなネットワークを少しでも取り戻していきたい”という想いが体現された、家具の町ならではの取り組みは、地域社会や家具文化の魅力を全国に発信しています。

#02 織田コレクション〈ODA COLLECTION〉

国内外で知られる椅子研究家であり、東海大学の名誉教授でもある織田憲嗣氏が、長年をかけて収集・研究してきた優れたデザインの家具と日用品群「織田コレクション」。 その数は、椅子1400種類以上、テーブル・キャビネット125種類以上、陶磁器3500ピース以上、カトラリー約1500ピース、図面や文献、フォトライブラリーなどの研究資料を含めると数万点にも及びます。(参照:織田憲嗣氏に聞く思い出のコレクション12

学術的にも貴重な資料として、世界的にも評価されているコレクションの一部が、東川町の文化発信の拠点「せんとぴゅあ」で、ギャラリーとして常設展示されていました。

今でこそ、サステナブルやSDGsといったワードをよく耳にするようになりましたが、本当の意味で“よいものを長く使うこと、それを次世代に残していくこと意義”を教えてくれる取り組みといえるでしょう。

旭川家具文化をどこよりも身近に体感できる「Meet up Furniture Asahikawa」

提供:旭川家具工業協同組合

ここまで、現地を通して感じた旭川家具の魅力や、オフィスでも活用できるものづくりのまちならではの製品、家具産地、東川町の魅力についてご紹介してきました。

今回イベントに参加して感じたのは、Meet up Furniture Asahikawaは、ただの家具展示会ではないということ。旭川が世界に誇るリアルな「ものづくりの現場」を、家具の聖地ならではの体験・出会いを通して、来場者に体感させてくれるのです。

また、出展しているメーカーのほとんどが、再生材の活用や森林の持続可能性を考慮して、プロダクトを生み出していました。現在、SDGsやサスティナブルといったワードが当たり前になったオフィス業界でも、Meet up Furniture Asahikawaや旭川の木製家具は注目すべき存在といえるでしょう。

ソーシャルインテリアではMeet up Furniture Asahikawa含め、全国各地のインテリアにまつわる情報や、最新トレンド・商品情報を常に収集・発信しています。

今回の記事で紹介した製品を自社のオフィスに導入したいとお考えの方や、CSRやSDGsへの取り組みに積極的な企業様、再生材や国産材などを用いた家具の提案も行っていますので、ぜひソーシャルインテリアにお問い合わせください。