会社が事務所移転を行う際には、顧客や取引先に向けて移転を案内する必要があります。しかし、多くの会社にとってオフィスの引っ越しは頻繁に行うものではないため、誰にどのような方法で行えばいいのか、悩んでしまう場合もあるでしょう。
この記事では、事務所移転のお知らせを伝えるべき相手や、挨拶状、メール文、ホームページなど媒体ごとの例文、お知らせに関する基礎知識を紹介します。オフィス移転の予定がある会社の担当者は、ぜひ参考にしてみてください。
また、以下ではオフィス移転の際に必要な届け出やタスクについてまとめています。
ぜひご活用ください。(ダウンロード無料)
目次
事務所移転のお知らせをする相手
事務所移転を行う際のお知らせは、基本的にビジネスマナーとして顧客から取引先、協力会社など業務に関係ある全ての相手に送ります。送り忘れがあると失礼になるだけでなく、注文書や納品書、請求書など重要な郵便物がきちんと届かず、トラブルが起きる可能性もあります。
抜けや漏れが出ないよう、移転が決まったら、最初にお知らせを送る相手を整理しておくのが大切です。
一般的なお知らせ方法と例文
オフィス移転のお知らせ方法は、挨拶状(ハガキ)やメール、ホームページ、FAXから、最近ではSNSを使用したものなどさまざまです。
基本的にどの方法でも、
- 時候の挨拶
- 日頃の感謝
- 移転情報(新しい事務所の住所や電話番号、新オフィスでの業務開始日、アクセスなど)
- 今後とも良いお付き合いやご愛顧を続けていただくためのお願い
などが含まれるものの、媒体によって細かい部分に違いがあるため注意が必要です。
ここからは、各方法の送り先や例文、注意点などを解説していきます。
挨拶状(ハガキ)
最も丁寧なお知らせの形式です。新規取引先やお客様などには、きちんと書面で伝えるようにしましょう。差出人は代表取締役社長とし、引越しの1ヶ月前から、遅くとも2週間前くらいには相手方に届くように送付してください。
・例文①
移転のご案内
拝啓 ○○の候(季節の挨拶)
貴社におかれましてはますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。
さて、このたび弊社は○年○月○日をもちまして、下記へ移転する運びとなりましたので、ご案内申し上げます。
今後ともご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
略儀ながら、書中をもちましてご挨拶申し上げます。
敬具
○月○日吉日
株式会社 ○○
代表取締役 ○○
新事務所
郵便番号 〒○○○-○○○○
住所 ○○県○○市○○○○
電話番号 ○○-○○○-○○○○
FAX ○○-○○○-○○○○
メールアドレス ○○○@○○○○
・例文②
移転のご案内
拝啓 ○○の候(季節の挨拶)
貴社におかれましてはますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、このたび弊社は○年○月○日より下記へ移転し、業務を行うこととなりました。
何とぞご高承の上、一層のお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。
まずは略儀ながら書中をもって、ご通知かたがたご挨拶申し上げます。
敬具
○月○日吉日
株式会社 ○○
代表取締役 ○○
新事務所
郵便番号 〒○○○-○○○○
住所 ○○県○○市○○○○
電話番号 ○○-○○○-○○○○
FAX ○○-○○○-○○○○
メールアドレス ○○○@○○○○
・例文③
移転のご案内
拝啓 ○○の候(季節の挨拶)
時下ますますご隆盛のこととお慶び申し上げます。
さて、このたび弊社ではかねてより準備を進めてまいりました本社の移転を完了し、
○年○月○日より営業を開始する運びとなりました。
これもひとえに皆様のご支援の賜物と社員一同感謝いたしております。
今後とも一層のご支援ご教示を賜りますようお願い申し上げます。
まずは略儀ながら書中をもって、ご挨拶申し上げます。
敬具
○月○日吉日
株式会社 ○○
代表取締役 ○○
新事務所
郵便番号 〒○○○-○○○○
住所 ○○県○○市○○○○
電話番号 ○○-○○○-○○○○
FAX ○○-○○○-○○○○
メールアドレス ○○○@○○○○
メール
基本的には、挨拶状を送るのがマナーとされていますが、親しい取引先やクライアントであれば、メールで済ませる場合もあります。ただ、ルールや格式を重視する取引先なら、失礼と思われないようメールと挨拶状を併用しましょう。
メールは届くのに時間はかからないものの、できれば移転の1ヶ月前から2週間前、遅くとも10日前には送るようにしてください。
メールの場合、差出人は送信する本人の名前を使います。また、メールタイトルは件名を
「事務所移転のご案内」
「本社移転のご案内」
「事務所移転のお知らせ及び、それに伴う休業日のお知らせ」
などにして、一目で移転の案内だと分かるようにしましょう。長くなる場合は【オフィス移転のご案内】のように【】や《》などを活用するのも有効です。
・例文①
株式会社 ○○
○○様
平素は格別のご愛顧、ありがとうございます。
さて、弊社は事務所移転に伴い○月○日より下記住所にて営業する運びとなりました。
新たな環境で、従業員一同さらなる飛躍を目指して精進いたしますので、
今後とも変わらぬお付き合いをどうぞよろしくお願いいたします。
まずは略儀ながら、ご報告とさせていただきます。
・例文②
株式会社 ○○
○○様
平素は格別のお引き立てを賜り厚く感謝申し上げます。
さて、このたび当社は○月○日より下記住所へ移転いたします。
皆様に、さらにご満足頂けるサービスを提供できるよう一層努力いたします。
今後とも、ご指導・ご鞭撻のほどお願い申し上げます。
略儀ながら、まずはご挨拶とさせていただきます。
・例文③
株式会社 ○○
○○様
いつもお世話になっております。
株式会社○○の××です。
表題の件にてご連絡差し上げました。
このたび、弊社は○月○日をもって下記住所へ移転する運びとなりました。
新事務所
郵便番号 〒○○○-○○○○
住所 ○○県○○市○○○○
電話番号 ○○-○○○-○○○○
FAX ○○-○○○-○○○○
メールアドレス ○○○@○○○○
これを機に、皆様のご期待に添えますよう、
従業員一同、一層の努力を重ねてまいる所存です。
メールにて恐縮ではございますが、まずは略儀ながらご挨拶まで。
ホームページ
ホームページでのお知らせは、挨拶状やメールよりも幅広く、不特定多数に向けて送るものです。将来的な顧客や取引先、採用候補者など、現在直接のつながりはないものの自社に興味をもってくれそうな相手のためにWEB上でも移転報告を行いましょう。
会社をよく知らない人にも見られるため、時候の挨拶などは省略し、新事務所の地図を掲載したり、リンクをつけたりするなど、分かりやすさを重視するケースが多くなっています。余裕をもって周知できるよう、掲載は2ヶ月から1ヶ月ほど前を目安にしてください。
お知らせは、ニュースリリースページだと見てもらえない可能性もあるため、できればホームページのトップページに載せるのが望ましいです。ただ、本社オフィスではなく、営業所などが移転する場合ならニュースページでも構いません。
・例文①
株式会社○○ オフィス移転のお知らせ
株式会社○○(代表取締役××)は、業務拡大につき、○年○月○日(○)より○○にオフィスを移転致しました。
お近くにお越しの際は、ぜひお立ち寄りくださいませ。
新オフィス
郵便番号 〒○○○-○○○○
住所 ○○県○○市○○○○
電話番号 ○○-○○○-○○○○
FAX ○○-○○○-○○○○
メールアドレス ○○○@○○○○
・例文②
事務所移転のお知らせ
平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、このたび営業拠点を○○に移転させていただく事となりました。
これを機に社員一同、気持ちを新たに、より一層社業に専心する所存でございます。
今後とも倍旧のお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。
【移転先事務所】
郵便番号 〒○○○-○○○○
住所 ○○県○○市○○○○
電話番号 ○○-○○○-○○○○
FAX ○○-○○○-○○○○
メールアドレス ○○○@○○○○
【移転先業務開始日】
○年○月○日
SNS
最近では、ホームページだけでなく、SNSを活用してお知らせを行う場合もあります。SNSでの発信もホームページと同様、将来の見込み客などに向けて行うものです。
現在の取引先や得意先への挨拶をSNSだけで済ませるのは不十分で、ビジネスマナーとしても望ましくありません。ただ、企業でSNSを運営しているなら、より広い範囲への情報発信手段として、ぜひ活用したいところです。SNSでのお知らせも2ヶ月から1ヶ月前には行うようにしましょう。ホームページ同様、文章は簡潔にし、地図も一緒に掲載するとより親切になります。
・例文①
【事務所移転のお知らせ】
このたび、弊社は事業拡大に伴い、○年○月○日より下記へ事務所移転する事になりました。
今後ともご指導とご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
移転先事務所
郵便番号 〒○○○-○○○○
住所 ○○県○○市○○○○
電話番号 ○○-○○○-○○○○
FAX ○○-○○○-○○○○
メールアドレス ○○○@○○○○
業務開始日
○年○月○日
・例文②
オフィス移転のお知らせ
このたび、株式会社○○は下記の住所へオフィス移転いたしました。
なお、○年○月○日までは旧オフィスで業務を行い、新オフィスでの業務は○年○月○日から開始させていただきます。
何卒ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。
【新オフィス】
郵便番号 〒○○○-○○○○
住所 ○○県○○市○○○○
電話番号 ○○-○○○-○○○○
FAX ○○-○○○-○○○○
メールアドレス ○○○@○○○○
FAX
メール同様、既存の顧客や取引先に対しては、お知らせにFAXも利用できます。挨拶状を出すほうがより正式な方法ですが、FAXは郵送よりも早く届くのが利点で、よりスピーディな情報伝達が可能です。
例えば、企業の代表者に向けて挨拶状を出しておき、普段やり取りをしている担当者にはFAXで先に連絡しておく方法もあります。FAXは郵送よりも早く届くとはいっても、FAXでの連絡もメールと同じく、移転の1ヶ月から2週間前くらいには済ませるようにしましょう。
書き方は基本的に挨拶状に似ていますが、詳細を記載する場合に「詳細は次の通り」を意味する「記」と「詳細はここまで」を意味する「以上」が使用されます。
・例文
事務所移転のお知らせ
拝啓 ○○の候(季節の挨拶)
貴社におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、このたび弊社株式会社○○は○年○月○日より事務所を下記に移転することになりましたのでご案内申し上げます。
これを機に、社員一同気持ちを新たにし、皆様の信頼にお応えできるよう倍旧の努力をしてまいる所存でございます。
今後とも一層のご支援を賜りますようお願い申し上げます。
まずは略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます。
敬具
○年○月○日吉日
株式会社○○ ××(差出人)
記
新事務所
郵便番号 〒○○○-○○○○
住所 ○○県○○市○○○○
電話番号 ○○-○○○-○○○○
FAX ○○-○○○-○○○○
メールアドレス ○○○@○○○○
以上
事務所移転のお知らせにまつわるQ&A
ここまで事務所移転のお知らせを出す相手や媒体ごとの文面の例などを紹介してきましたが、実際にオフィス引越しを行う場合、ほかにも分からない点が多数出てくることでしょう。
ここからは、お知らせはいつまでに出さないといけないのか、絶対に出さないといけないものなのかなど、お知らせに関する細かな疑問点に加え、引越しの際に取引先等からお祝いをいただいた場合の対応などをQ&A形式で解説していきます。
Q1 事務所移転のお知らせのタイミングは?
移転の案内は、最低でも引越しの1ヶ月前くらいまでには準備を終え、1ヶ月~2週間前には発送できるようにしておきましょう。直前になると、引越し作業が忙しくなるため、お知らせにかける時間的余裕がなくなる恐れがあります。メールやFAXには速達性がありますが、準備自体は早めに済ませておくと安心です。
また、頻繁に来訪があったり、書類等をやり取りしたりなど、早めに知らせた方が良い相手がいるかどうかも事前に確認が必要です。もし、どうしても直前になってしまう場合には、電話やメールなどで連絡を先に済ませ、後から挨拶状を出す方法もあります。
Q2 事務所移転のお祝いをもらったらどうする?
取引先からお祝いをいただいた場合は、きちんとお返しをするのがマナーです。お祝いをもらってから1週間、遅くとも1ヶ月以内にはお返しするようにしましょう。移転で忙しく、すぐに送れない場合は、お礼状だけでも出して感謝の気持ちを伝えてください。
返礼品を何にするかは相手との関係次第で変わるものの、一般的にはもらったお祝い品の半額程度が相場です。お菓子やオフィス用品、タオル、カタログギフトなど相手の負担になりにくい品を選びましょう。
箱には紅白ののしをつけて「御礼」もしくは「内祝」と記載します。現金や商品券、相手が送ったのと同じ品物を贈るのはマナー違反となるため注意が必要です。
Q3 事務所移転のお知らせをしないとどうなる?
最も困るのは、普段の取引先やお客様からの郵便物が届かなかったり、訪問の際に場所を間違えてしまったりするなどのトラブルが起き、業務に支障をきたしてしまう可能性です。移転に伴い、何日かオフィスを閉じるケースや、電話・FAX番号、メールアドレスなどが変更になるときは、どうやって連絡をとればいいのかが分からず、取引先の人を困らせてしまいます。
基本的なマナーも守れない企業と思われてしまうことで、取引先からの信用も失いかねません。普段から仕事でつながりのある相手には、全員忘れず伝えるべきといえるでしょう。
Q4 事務所移転のお知らせに一工夫するなら?
移転案内を事務的なものにせず、好印象を与えるために一工夫するのもおすすめです。例えば、住所を書くだけでなく、地図や最寄り駅の出口(南口、北口など)の説明を添えるのも新設です。メールで伝えるのであれば、会社までの道順を案内する動画を撮影して添付するとさらに分かりやすくなります。
また、引越しに関するお知らせだけでなく、日頃の感謝や今後の心構えなどを書いてみるのも良いでしょう。ほかにも、移転先に関係者を招いて引越し祝いのイベントを開催してもてなしつつ、最後にお土産を渡して移転祝いのお返しとする方法もあります。
Q5 お祝いのお花をいただく際のマナーは?
お祝いのお花をいただいた場合は、特に理由がなければそのまま受け取って構いません。いただいたお花はお披露目として、しばらくは新事務所のよく目につく場所に飾っておきます。ただ、長期になると花にとってストレスになるため、一定期間が経過した後は、直射日光やエアコンの風が当たらない静かな場所へ移動させてあげると良いでしょう。
また、お花をもらった場合もお祝いの品と同様、値段の半額程度を目安にお返しを贈るのがマナーです。もし、もらっても飾る場所がないなどの理由から受け取れない場合は、相手に用意させてから断るのではなく、「誠に勝手ながら祝花等につきましては、謹んで辞退させていただきます」と、あらかじめお知らせに記載しておきましょう。
Q6 お祝いをいただく際にウィッシュリストを使ってもいいですか?
最近では、事務所移転のお祝いにAmazonのウィッシュリスト(ほしい物リスト)を公開する企業も増えています。ウィッシュリストとは、自分が買いたい商品やプレゼントに欲しい品物を登録しておけるサービスです。リストを公開すれば、もらうと本当に嬉しい品物をお祝いにもらえるため、相手もお祝い選びに悩む必要がなくなります。
せっかくもらったお祝いを使えずに余らせたり、お花の世話ができずに枯らせてしまったりなど、贈る側ともらう側のミスマッチを防げるのもメリットです。ただ、相手によっては厚かましいと思われてしまう可能性もあるため、取引先等との関係も考えて公開するかどうかを決めてください。
マナーを守って事務所移転のお知らせをしよう
事務所移転の際には、普段から付き合いのある取引先や顧客へきちんとお知らせを行うようにしましょう。案内を送るのは、引越しの1ヶ月から2週間前が目安です。直前のお知らせになったり忘れたりしてしまうと、大切な書類が届かない、訪問先を間違えるなどトラブルの原因になるため注意が必要です。
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