-
PROJECT株式会社キープペダリング
-
CATEGORY家具コーディネート
-
YEAR2024
【古民家再生×地域活性化】 150年超の歴史を紡ぐ、地域に根ざした再生プロジェクト「古民家なかむら」
株式会社キープペダリング様
- CATEGORY
- 家具コーディネート
- YEAR
- 2024
- MEMBER
-
Project Management:Ayana Okamoto
Interior Coordinate:Yuri Tezuka
INTERVIEW
インタビュー由緒ある古民家をもう一度”地域の中心”に
2016年に、PRやマーケティングを専門領域とする株式会社キープペダリングを立ち上げ、自身のナレッジや経験をクライアントの皆様にご提供してきました。
ちょうどコロナ禍で真っ最中の時期に、山梨県庁で非常勤の1年間を含め3年間ほど地方公務員として仕事をさせていただく機会をいただき、そのタイミングで”古民家なかむら”の案件に接することになりましたが、当時は地域活性化をご担当いただける事業者様をマッチングすることがミッションだったため、私自身が物件に関わるということは考えていませんでした。
しかし、県庁での3年間の任期を終え民間の立場である自分の会社に戻ってから、今後自社を経営していくうえで次なるステップとして非常に重要な事業だと感じ、古民家なかむらの再生事業をお引き受けすることを決めたんです。
「古民家」は、一般の方や事業者にとって非常に魅力的。
「古民家カフェ」や「古民家民泊」は、日本人の方に興味を持ってもらいやすいですし、インバウンド需要を見込みたい場合にも、日本の古き良き時代の趣を残しつつ、斬新でスタイリッシュなトレンドに変えることができるためです。
しかし、実際に案件を進行するうえではさまざまな課題・ミッションがありました。
まず、築150年超を迎える古民家の修繕と再生では、古民家の歴史や文化を尊重することが最も重要な事項でありつつも、現代においても快適な空間に仕上げなければなりませんでした。
また、家主の想いを継承し、古民家の持つ価値を活かすことも重要な課題。家主との綿密なコミュニケーションを通して、古民家の歴史やエピソードを施設のコンセプトやデザインに反映しました。
さらに、地域住民との連携も不可欠です。昔から地域の中心として頼られてきた名家であることを忘れず、現代でも地域の皆さんに利用してもらえる場所にする必要がありました。
歴史の名残はそのままに、インテリアをアップデート
古民家なかむらは、かつて河口湖地域の名家として集落の中心的な役割を果たしていました。
また、家主である中村家は、富士山信仰の富士講(※)の旅人たちを家に宿泊させ、富士山頂までガイドする御師(おし)※のビジネスを営んでいた歴史があります。そして時代の変遷とともに、養蚕業や絹織物の貿易業に事業を転換していき、それらの名残は家屋のなかに色濃く残っています。
この由緒ある古民家は、①カフェ ②商店 ③コワーキング / イベントスペースの大きく分けて3つの部門に分けて運営していますが、それらをただの観光スポットにするわけにはいかないのです。中村家の歴史と文化を後世に残していかなければなりませんし、古来から地域の人々に頼られて、集落の中心になっていた場所だということを忘れずに、ビジネスのプランをつくらなければなりませんでした。
そういったコンセプトに沿って家具を選ぶ必要があったのですが、初期費用はなるべく抑えたかった。
そんなときに、ネットで色々調べていたところ、ソーシャルインテリア様のサービスを見つけました。インテリアのコーディネート・提案をしっかりやっていただけて、なおかつサブスクで初期費用は抑えられる。そういったサービスの特徴に魅力を感じ、問い合わせをさせていただきました。実際に担当いただいた方は、非常に丁寧で我々の想いやコンセプトに寄り添った提案をしてくださったのが印象的でした。
空間について、1階のカフェ部分は内装に大きく手を加えることはせず、中村家が生活を営んできた畳の間をそのまま活かした、日本式に玄関で靴を抜いてあがっていただくお座敷スタイルを踏襲。古民家の伝統的な要素を活かしたノスタルジックな古民家の歴史と文化を感じながら、まったりと静寂の中で飲食を楽しめる空間としました。
ショップ部分は、多くの方に立ち寄っていただけるよう、土間にリノベーションしながらも、商家の佇まいを感じられる梁や建具等はそのままに、古民家で長年使われてきた家具などを什器にしてお客様に古民家のエッセンスを楽しみながらショッピングしていただける空間を作りました。
1階とは対照的に、2階は、ホテルロビーのような上質な空間を目指したため、家具のテイストにもこだわってソーシャルインテリア様の全面協力をいただきました。最後の仕上げは私の感覚で、古民家の家具を活用して、古民家ならではの趣も感じられるようにしています。
※富士講 :江戸時代に成立した民衆信仰のひとつ。富士山を信仰する人々の集まりにより作られた信仰的な集団
※御師(おし):特定の寺社に属して、参詣者の参拝や宿泊を世話する役割
日本の伝統を感じる「Real Japanese Space」
足を運んでくださった皆さんは「懐かしい。おじいちゃんおばあちゃんの家に来たみたい。」と口を揃えておっしゃいます。
お客様は日本人と外国から来た方が半々くらいですが、外国人の方は特に1階の空間を見て大変感動されてますね。低い天井、靴を脱いで上がる畳、掘りごたつ、2階の窓から見える美しい富士山…それら全てに”本当の日本”を感じていただけているのではと思います。
また、遠方からの観光客の方だけではなく、地域住民の方にも非常に喜んでいただいております。
2階のイベント/コワーキングスペースは単なる仕事場ではなく、様々な用途で利用できることを積極的にアピールしています。さまざまなイベント・集会や女子会などにも利用できますし、ワークショップなどの習い事や体験会なども開催していきたいと思いますので、ぜひ地元の皆さまにも利用していただきたいですね。
空間としては、1階と2階のテイストにギャップを持たせたのが大成功でした。お客様をご案内するときに「2階はこういった目的で空間を作っています。実際に見ていただくとおわかりになると思いますが、1階と2階のギャップを楽しんでください。」という説明をしながら、階段箪笥を上がっていくのですが、上がり切ったときは皆さんが「素敵!」と感動しながら、一斉に写真を撮り始めます(笑)
フロアやお部屋ごとにインテリアのギャップをもたせることができるのも、古民家なかむらならではのブランディングだなと、今あらためて感じています。
古民家なかむら再生プロジェクトが示す地方創生の未来
しっかりとコンセプトを練り、空間を作り上げたので、これからはお客様にこの場所をどのように好きになっていただくかを考える段階です。お客様の声に耳を傾けながらニーズを理解し、空間をアップデートしていきたいと考えています。
また、今回の案件は氷山の一角で、日本各地には古き良きものが活用されずに残っている場所がたくさんあります。今後、地元を中心に山梨県内のそういった場所をどんどん活性化させていきたいと思っています。
ソーシャルインテリア様も地方創生や地方の活性化に力を入れていきたいということですので、またぜひご一緒したいと思っていますし、今後協業させていただく際には、家具提案だけでなくブランディングの面でも協力して取り組めたら素敵ですね。
今回、膨大な予算が無くても、強い意志やビジョンがあれば、ソーシャルインテリア様のような会社と出会い、様々な方法で課題を解決できることを実感しました。古民家なかむらの案件におけるソーシャルインテリア様との連携が、日本各地で同様のビジネスを目指す方々にとって、有益なケーススタディとなることを願っております。